「早起きは三文の徳」のことわざがあるが、ほんの少しの徳どころか、中には、朝活で人生が変わったという人までいる。司法書士の廿野崇弘さんもその一人だ。36才で合格率4〜5%といわれる超難関の司法書士試験に合格。挫折の危機を救ったのが“朝勉”だった。
「前職は地方公務員で、一般的には人気の職業でしたが、どうしても自分に合わず、毎日のように『転職したい!』と思うように。そこで武器になる資格を取りたいと考え、司法書士を目指しました」(廿野さん・以下同)
体調不良のため32才で退職。公務員時代の蓄えを削って受験に専念することに不安を感じ、アルバイトをしながら勉強する道を選んだ。しかし、合格までに4年を要することになる……。
「初めは週に2〜3回資格の学校に通い、空いた時間にバイトをしていましたが、『新しい仕事に慣れない』『体調が戻らない』などと言い訳を作っては勉強をサボる日々で、試験もまったく歯が立ちません。2年目も漫然と過ごし、諦めや絶望感も漂い始めました」
3年目で少しずつ講義内容が理解できるようになると、廿野さんの本気度は急速に上昇。4年目からは通学からウェブ講義に変え、アルバイトも減らし、朝勉中心の生活に切り替えた。
「理由は、朝は前日の短期記憶がリセットされ、新しいことを記憶しやすいと聞いたからです。また、期限があった方が“サボっていると間に合わない!”という気持ちが働いて集中力が増します。
とはいえ、初めの頃は眠くて机に向かう気にならない。そこで、前日勉強した内容を付箋に書きとめ、寝る前に洗面台やトイレなど目に付くところに貼り、翌朝確認するといった“ちょこっと勉強”から始めました」
4年目に入り、どうモチベーションを維持したのか。
「モチベーションに頼らず、朝勉を習慣化させることに主眼を置きました。
朝にウェブ講義を聴き、夜は復習。しっかり睡眠を取って翌朝スッキリ起きるという生活を続けるうちに、3か月ほどで朝勉の習慣がつきました。勉強は楽しいものではありませんが、しないと落ち着かなくなってくるんです」
強い疲労を感じて挫折しそうになるときもあった。
「脳の栄養補給に、ブドウ糖が豊富なラムネを食べながら、合格した後の明るい未来を想像し、やる気を絞り出しました(笑い)。朝勉は他人に振り回されず計画的に学べ、各段に効率が上がりました」
4年後、ついに司法書士試験に合格。人生でも大きな変化があった。
「自分の事務所を開業し、結婚して2児の父になりました。朝勉を成功させたことで自分に自信が持てるようになり、以前より前向きに人生を楽しめています」
【プロフィール】
司法書士 廿野崇弘(つづの・たかひろ)さん/司法書士として活動する傍ら、朝時間を活用し、資格に関する情報や勉強法を発信するサイト「資格ワン」を運営中。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2023年6月29日号