「朝活」という言葉もすっかり定着し、朝のひとときを充実させている人が増えている。では、朝活は中高年にもよいことなのだろうか?
「早起きして活動すると満足度が上がるのは事実です」と精神科医の西多昌規さんは言う。
「人間には、クロノタイプ(体内時計のパターン)があり、体内時計が前進すると朝型、後進すると夜型、その中間型に分かれます。一般的に若い人は夜型で、加齢とともに朝型になっていく。余談ですが、朝が弱い若者にとって学校の始業時間はやや早い。アメリカでは、始業時間を遅らせて成績が上がり、居眠りや問題行動が減ったという調査結果も出ています。
それに比べ、自然と早起きになる中高年は、若い人より朝活に取り組みやすいといえます。
一日の前半に充実した活動が行えれば、体のリズムも整います。また、判断力を要する作業も、脳が活発に働く朝がおすすめです。昨今、リスキリング(学び直し)も注目されていますので、中高年の朝活は、無理のない範囲でどんどんやってください」(西多さん・以下同)
どんな点に注意すべきか。
「早起きが過ぎると体内時計が乱れ、3時起床、19時就寝のように、どんどん時間が前倒しになってしまいます。家族や友人との活動時間帯がズレすぎるのも問題なので、そういった場合は、朝の散歩を夕方以降に変えるなど、光を浴びる時間を遅らせて、体内時計を後進させましょう」
人間には、細胞の数だけ体内時計があり、脳内の視交叉上核という部位にある親時計が、すべてをコントロールしている。朝日を浴びると体内時計がリセットされるといわれるが、超朝型は逆効果になるのだ。
「最近、体内時計とは別に、『食事リズム(いわゆる腹時計)』があるといわれています。どこに分布しているか、どんな機能があるのかはまだわかっていないのですが、いくら朝日を浴びても、朝食を抜いてしまうと腹時計がリセットされず、体内時計が活発にならない可能性があります。
生体リズムを完全に整えるためにも、朝食は必須。それも、時間帯が大切です。起床1時間後くらいに、日々なるべく一定時間に食べることが望ましいでしょう。高脂肪・高糖分のものを控え、腹七〜八分目に抑えることが、元気に朝活を続ける秘訣です」
【プロフィール】
精神科医 西多昌規さん/早稲田大学教授。精神医学、睡眠医学、スポーツ医学・心理学などを専門とし、テレビや講演などメディア出演も多い。著書に『休む技術』(大和書房)など。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2023年6月29日号