日本将棋連盟は6月9日に通常総会を開き、会長退任を表明していた佐藤康光九段(53)に代わり、羽生善治九段(52)が新会長に就任した。1996年に史上初となる7大タイトル(当時)を独占し、今もトップ棋士として活躍する羽生九段が会長となったことで、大きな“経済効果”が生まれそうだ。
新体制下の日本将棋連盟にはアマチュアの有段者向けに発行される「免状」の申請が殺到することになりそうだという。観戦記者が言う。
「『免状』とは、アマチュア有段者に対して日本将棋連盟が棋力を公認するもので、連盟のトップである会長と、棋界最高位にあたる竜王、名人が一枚一枚に直筆の署名を入れます。会長として羽生九段、竜王・名人のいずれも保持して破竹の快進撃を続ける藤井聡太七冠(20)の署名が並ぶことになるので、人気が沸騰するのではないか」
免状について紹介する日本将棋連盟の公式サイトでは、羽生九段と藤井七冠が署名している姿の写真も掲載されている。その説明によれば、申請できるのは初段から六段。免状料金は段位によって異なり、初段は3万3000円、二段が4万4000円、三段が5万5000円、四段が7万7000円、五段が14万8500円(四段免状があれば11万円)、そして六段が33万円(五段免状があれば27万5000円)と設定されている。前出・観戦記者が解説する。
「この免状は日本将棋連盟にとって重要な収入源となってきました。羽生九段と藤井七冠は将棋界を代表するスーパースター2人ですから、相応の棋力はあるけどこれまで免状を取っていなかった人なども、これを機会に免状を取ろうと考えるのではないでしょうか」
段位認定の条件に「相応の棋力」は建前?
日本将棋連盟が棋力を公認となると、簡単に取れるわけではなさそうに思えるが、「実際には様々な方法がある」(同前)という。
「もちろん実際には、何局も将棋を指してみないことには、その人の棋力はわかりません。将棋連盟の道場で一定の成績をあげたり、格式の高い大会で好成績をあげたりすれば、棋力は認定されます。一般的な目安としては、アマチュア大会の県大会優勝者でアマ四段、全国大会優勝者でアマ六段相当です。
ただし、段位認定の条件としての相応の棋力が求められるというのは、あくまでも建前という一面もあります。将棋連盟の本音としては、将棋界を応援してくれる人や、気持ちよくお金を出してくれる人には、どんどん免状をあげたい。プロ棋士の推薦があれば、それでもう棋力認定はOKです。
芸能人や文化人、スポーツ選手、政財界関係者たちとの対談などとセットで“駒落ち(ハンディあり)で一局指してみましょう”という企画はよくあります。その際に、棋士は指導対局なので相手がそれなりに勉強して定跡通りの手をきちんと指してきたら、きれいに負けてあげたりするわけです。“うまく負かされました”ということで少し甘めの実力認定で免状を授与するといったケースがある。