“国民病”として知られる高血圧。自宅でも手軽に数値が測れることから、気にする人は多い。その治療の一環として多くの医師が推奨し、高血圧患者の食事・栄養指導として実施されているのが「減塩」だ。
厚生労働省が定めた食事摂取基準(2020年版)では、1日の塩分(食塩)摂取量は成人男性で7.5g未満、女性で6.5g未満とされている。
日本人の食塩摂取量の平均は1日約10gのため、目標の達成には食事の内容に気を配らなければならない。
しかし、「減塩をしても血圧は下がらない」と指摘するのが『運動・減塩はいますぐやめるに限る!』の著者で内科医の大脇幸志郎氏だ。
「減塩と血圧についての過去の研究データを検証した『コクランレビュー』によると、1日の食塩摂取量を11.8gから4gに減らすことで、血圧は白人なら1、黒人なら4ほど下がったのに対し、アジア人は『減塩で血圧が上がるのか下がるのかわからない』という結果でした。それ以外にも、『減塩で血圧が上昇した』との反対の研究結果が世界にはたくさんあります」(大脇医師)
さらに、薬で血圧を下げても病気の予防効果は(世の中で期待されるほど)大きくないという。
「医学誌『ランセット』に掲載の降圧剤に関する研究論文(2021年)では、薬の服用が心筋梗塞や脳卒中のリスク減につながると確かめられたものの、その効果はごく僅かでした。被験者の99%が、血圧を下げても下げなくても研究期間の結果は同じだったのです」(同前)
大脇医師によると、降圧剤の服用による心筋梗塞や脳卒中の予防効果は「多少はある」と言えるものの、「個人がはっきり感じ取れるほどではない」のが実情だという。
減塩にしろ、降圧剤の服用にしろ、高血圧治療が生活に及ぼす影響は決して小さくない。取り組む以上、効果がどれくらいかも知っておきたい。
※週刊ポスト2023年6月30日・7月7日号