北朝鮮では4月から外貨禁止令が出されて、市民が秘匿している米ドルや中国の人民元を没収しているという。新型コロナウイルスの流行もほぼ収まったことで中国との貿易は徐々に再開、外貨で買い物をする人が増加しているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮当局による「外貨禁止令」は各地の街角で市民を無作為に呼び止め、米ドルと人民元を持っていないかどうかを確かめ、持っていた場合は即没収するというもの。
市民が米ドルや人民元を所持しているのは、貿易関係者らを通じて、北朝鮮国内で不足している物資を中国で買い求めるためだ。
北朝鮮ウォンはドルや人民元に比べると価値が低く、100人民元(約2000円)をウォンから替えるためには、12万ウォン(1ウォン=0.016円)が必要になる。100人民元の買い物をする場合、北朝鮮の最高額紙幣である5000ウォンでも24枚が必要となる。1000ウォン札なら120枚となるなど、ウォンでの買い物は札がかさばって、使いづらいという。
ウォンが嫌われるもう一つの理由はほとんどの紙幣がぼろぼろになっており、汚いことだ。現在流通しているウォン札は2008年に印刷された1000ウォン、2000ウォン、5000ウォン札と、2014年から発行された新しい5000ウォン札があるが、発行されてから15年も経っても、新たに印刷された紙幣はほとんど流通していない。北朝鮮国内の紙幣はほとんどがすり減っており、人々は紙幣を糊付けしたり、薄紙を貼って破れた部分を補強している状態だという。
朝鮮労働党の政府要人や貿易などを扱う党政府機関はドルや人民元で決済しており、北朝鮮ウォンは使い道がないことから、ボロボロの紙幣を野放しにしているのが実態だ。
北朝鮮の場合、主な輸出製品としては石炭や石油、鉄鉱石などの豊富な鉱産資源が挙げられるが、金正恩政権の核兵器開発による国連の経済制裁で国際貿易は実質的な禁止されているため、北朝鮮ウォンは対外的に使われることはほとんどなく、国内でボロボロのまま流通しているのが現状だ。