血中コレステロール値を上げる代表的な食品とされてきた「卵」。しかし近年の研究結果では、卵を食べてもコレステロール値に影響はないとする指摘が増えている。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が言う。
「たしかに卵にはコレステロールが多く含まれていますが、食品で摂取したから血中の値が上がるという単純な話ではありません。近年の研究結果を受け、米政府は2015年に改定した食生活指針から、コレステロールの摂取基準を撤廃しました」
日本ではコレステロールについて「善玉(HDL)」「悪玉(LDL)」に分けて語られるが、医学統計学が専門の大櫛陽一氏(東海大学医学部名誉教授)はそもそもLDLコレステロールは「悪玉」ではないと指摘する。
「細胞膜や神経細胞、ホルモンなどの原料として身体に必須なコレステロールは、その8割が肝臓で合成されています。食事からのコレステロール摂取が増えれば、その分、合成される量が調節されて肝臓の負担も減少します。
そのコレステロールを各細胞に運ぶ重要な役割を果たすのがLDLコレステロール。体内での融通を助けるために働くので、『悪玉』ではないと言えるのです」
LDLコレステロール値は「脂質異常症」の診断基準の一つとされている。治療においてコレステロールを下げる薬として日本で主流のスタチン系薬は「世界ではリスクが大きい」と認識されている点にも注目だ。
「20年ほど前から、スタチン系薬は脂質異常症の治療効果に比べて多くの副作用があることが報告されています。2008年には筋細胞が融解・壊死する横紋筋融解症や、糖尿病の発症リスクを高めることがわかりました。欧米では、スタチン系薬で糖尿病の発症率が1.7倍、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の発症率が10倍になったとの研究結果もあります」(同前)
治療効果が認められている黄色腫(※注:上まぶたの内側などにできる黄色の扁平な塊)の患者以外は、スタチン系薬の副作用リスクが上回るというのが大櫛氏の見解だ。
※週刊ポスト2023年6月30日・7月7日号