中国人民解放軍は、昨年末までに南シナ海の最重要拠点である西沙諸島永興島の海南省三沙市の海軍防空旅団本部内に大規模な地対空ミサイル基地を建設したが、フィリピン、マレーシアなどが領有を主張している南沙諸島の3島にも同様のミサイルサイトを完成させているという。
南シナ海上空に多数の偵察機を飛ばしている米軍に対抗するためで、南シナ海の領有を既成事実化しようとする中国と「航行の自由」を主張する米国の対立は一層深まるばかりだ。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
永興島と南沙諸島の3島に配備されたのは「紅旗-9地対空ミサイル(HQ-9SAM)」。1980年代から長距離防空ミサイルと開発され、実用高度は25km~30km、射程約200km、速度マッハ6で、命中精度は90%以上と極めて高い。
永興島に建設されたミサイル基地は中国海軍防空旅団92115部隊に所属しており、4基のミサイルサイロを完成させた。南沙諸島ではスービ、ミスチーフ、フィアリー・クロス礁という3つの岩礁を埋め立てた人工島に、それぞれミサイルサイロが1基ずつ建設されている様子が米軍の偵察機によって撮影されたという。
西沙、南沙両諸島を中心とする南シナ海上空の米軍の偵察活動について、中国政府系のシンクタンク「南シナ海戦略情勢調査計画」(SCSPI)は米軍が昨年1月から11月までの間に、南シナ海上空だけで589機の大型軍用機を派遣し、中国の軍事動向を中心とした情報収集を行っていたと報告。「米軍は沖縄県の嘉手納基地とフィリピンのクラーク基地から年間で600機以上の軍用機を派遣しており、中国の領土防衛に大きな脅威になっている」と指摘している。
中国政府は2012年に西沙諸島永興島にアジア各国と領有権を争う南シナ海の島々の管轄目的で、地方行政組織の三沙市を創設し既成事実化を進めているが、米政府が艦船や軍用機による偵察活動を活発化させていることに、中国は強く反発している。地対空ミサイル基地を建設することで軍事力増強を進め、米軍との対決姿勢を強めている。