突然死につながりやすい脳卒中だ。血栓により血流が滞ることで発症する脳梗塞は、コレステロール値が高い脂質異常症が深く関係するとされるが、医学統計学が専門の大櫛陽一氏(東海大学医学部名誉教授)は自身の研究結果からコレステロールが高い人のほうが脳卒中になりにくいと指摘する。
「脳卒中患者4万人超と一般住民2万人超のデータを用いた『症例対照研究』(2009年発表)で、A高脂血症ではない人、B高脂血症で治療中の人、C高脂血症で治療していない人の3グループに分けて検証しました。
その結果、脳卒中患者でCグループ(コレステロールが高い人)の割合が非常に低く、くも膜下出血と脳内出血、さらに脳梗塞にも罹患しにくいことがわかりました。逆に、Aグループが脳卒中になりやすいことがわかったのです」
また脳卒中で入院しても、高脂血症と診断されていたら入院死亡率が2分の1から3分の1と低いこともわかった。「コレステロール値が高いほうが血管の栄養状態が良く、脳卒中の発症および重症化リスクが低いのです」と大櫛氏は言う。
一般に、「野菜を食べることは健康にいい」と言われているが、脳卒中に関しては、野菜を大量に摂取しても予防にはならないことを示唆する研究結果もある。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が言う。
「2022年2月に発表された英オックスフォード大の研究論文によると、生野菜と調理済みを合わせた総野菜摂取量が(大さじ換算で)1日8杯以上の群は、同1杯以下の群に比べても脳卒中のリスクが変わらないとの結果が出ています」
さらに同論文では、統計的優位性はないものの、調理済み野菜の摂取量が1日4杯以上の群では、1日1杯以下の群に比べて脳卒中リスクが上がったとしている。
※週刊ポスト2023年6月30日・7月7日号