連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合8時〜ほか)の影響で、植物への関心が高まっている中、注目したいのが日本各地にある庭園だ。折しも季節は梅雨。露をまとった木々や花々の緑は瑞々しさを増し、その緑の濃さが晴天時に生命力を放散します。さぁ、庭園散策に出かけませんか。
そこで、「歴史とロマンを感じる由緒ある庭」「雨でも美しさが際立つ自然体の庭園」「知的探究心が満たされるアートなお庭」の3つに分けて庭園をピックアップ。ここでは「歴史とロマンを感じる由緒ある庭」を紹介します。
【教えてくれた人】
イトウマサトシさん/日本全国の約1900か所の庭園を紹介する庭園情報メディア『おにわさん』(oniwa.garden)編集・運営。インスタグラムは約8万フォロワー。
小野健吉さん/日本の庭園学者。大阪観光大学観光学部教授。著書に『日本庭園—空間の美の歴史』(岩波新書)や『庭園と観光』(晃洋書房)など。
●御花・立花氏庭園「松濤園」
こちらは日本で唯一の「泊まれる国指定文化財」の庭園だ。
「座敷や書院の建物から庭の池を眺めることを想定して造られた『池泉鑑賞式庭園』です。池の中には100近い岩島があり、その周りには無数の黒松が植えられ、格式の高さがうかがえます。もとは江戸時代に水郷柳川の城下町を治めた後国柳河藩の5代藩主・立花貞俶の別邸で、明治時代に立花家の14代当主となった立花寛治により『松濤園』は整えられました。戦後は、その末裔が料亭旅館『御花』として創業し、現在に至ります。夜は藩主の屋敷から庭園が眺められます」(イトウさん)
一般の見学も受け付けているが、夜の風景を見られるのは宿泊者の特権だ。趣のある大広間のフリーラウンジで青々と茂る松を眺めながら、ゆっくりとくつろぐのは最高のひととき。また、朝日が差し込む大広間の縁側に座って、ゆっくりと松濤園を眺めるのもよい。
住所:福岡県柳川市新外町1
営業時間・休園日:問い合わせを
料金:2名1室朝食付き1万5220円(1人分)ほか。
●三渓園「門柱をくぐると、100年前の日本が──」
近代横浜を代表する実業家の原三溪(本名・富太郎)が、1906(明治39)年に開園した日本庭園。敷地面積は約18ヘクタールと広大だ。
「海に面した横浜市本牧の地形を生かし、池や渓流などを造成。緑豊かな園内には京都の旧燈明寺三重塔や、紀州藩巌出御殿だった臨春閣などが移築され、これらの建物は重要文化財に指定されています」(小野さん)
梅や桜、ツツジなど、季節ごとに楽しめる。
住所:神奈川県横浜市中区本牧三之谷58-1
開園時間:9〜17時(入園は16時半まで)
休園日:年末
料金:700円ほか
●旧池田氏庭園「日本最大級の雪見灯籠が圧巻」
明治中頃から戦前まで高梨村(現・大仙市)の村長を務め、東北三大地主と呼ばれた池田文太郎氏が残した庭園で、国指定名勝となっている。
「仙北平野に広がる田園の中で圧倒的な存在感を示す庭園です。ハイライトは日本最大級ともいわれる高さ4mの雪見灯籠と、大正時代に建てられた国指定重要文化財の洋館です。この洋館は秋田初の鉄筋コンクリート建築。梅雨の時期は花菖蒲が建造物によく映えますよ」(イトウさん)
住所:秋田県大仙市高梨字大嶋1
開園時間:9〜16時(入園は15時半まで)
休園日:月曜(祝日の場合は翌火曜)
料金:300円ほか