加齢による目の病気で怖いのが、日本人の失明原因第1位である緑内障だ。眼科医の平松類医師(二本松眼科病院副院長)は多くの患者が間違えている知識として、発症に視力低下は関係なく、直前まで視力が良くても緑内障になると説明する。
「そのため、視力検査は緑内障の早期発見にあまり役に立ちません。たしかに、昔は徐々に視力が落ちて失明に至る病気が多かった。しかし現在は視力低下を経て失明する病気は克服されつつある。緑内症を発見するには視野検査や眼圧検査の受診が必要です」
ただ近年は、眼圧が正常なのに緑内障になる人が増えているという。
「これまでの常識では眼圧測定で神経にダメージがあるかを判断し、緑内障を診断していたが今は、緑内障患者の7割は眼圧が正常だとされます。眼圧に異常がないのに目の神経が傷む理由としては、特にアジアの人は視神経自体が弱くて正常な圧力でも負けてしまうという特性があるからだと考えられる」(同前)
発症すればやがて失明するイメージが強い緑内障だが、現在は治療により99%の人は失明に至らないという。
「30年くらい前までは失明するケースも多かったのですが、最近は新薬が出たことで失明が防げるようになりました。とはいえ、勘違いしてほしくないのですが、緑内障は治りません。早期発見・早期治療により、現状維持が見込めるようになったということです」
平松医師は緑内障の発見には「眼底カメラによる検査が有効だ」という。
「目の奥に異常がないかを眼底カメラでチェックすれば、緑内障に限らず、失明原因の上位を占める糖尿病網膜症や網膜色素変性症、黄斑変性症もわかります。ただ、眼底検査は通常の人間ドックや健康診断には含まれないので、意識的に追加する必要があります」
※週刊ポスト2023年6月30日・7月7日号