連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合8時〜ほか)の影響で、植物への関心が高まっている中、注目したいのが日本各地にある庭園だ。折しも季節は梅雨。露をまとった木々や花々の緑は瑞々しさを増し、その緑の濃さが晴天時に生命力を放散します。さぁ、庭園散策に出かけませんか。
そこで、「歴史とロマンを感じる由緒ある庭」「雨でも美しさが際立つ自然体の庭園」「知的探究心が満たされるアートなお庭」の3つに分けて庭園をピックアップ。ここでは「雨でも美しさが際立つ自然体の庭園」を紹介します。
【教えてくれた人】
イトウマサトシさん/日本全国の約1900か所の庭園を紹介する庭園情報メディア『おにわさん』(oniwa.garden)編集・運営。インスタグラムは約8万フォロワー。
小野健吉さん/日本の庭園学者。大阪観光大学観光学部教授。著書に『日本庭園—空間の美の歴史』(岩波新書)や『庭園と観光』(晃洋書房)など。
●青岸寺「強雨で姿を変える」
東海道新幹線米原駅から徒歩7分。青岸寺の庭は江戸時代初期に作庭された国指定の名勝だ。
「基本は苔で流水を表現した枯山水ながら、一定数の雨が降ると山の湧水が伏流水となってたまり、池泉庭園になる珍しい庭園です。晴れた日と雨の日に出かけて見比べていただくと面白いです。境内のお座敷の一角にある寺カフェ『喫茶去kissa-ko』からの眺めも最高です」(イトウさん)
住所:滋賀県米原市米原669
開園時間:9〜17時(冬季は16時)
休園日:火曜、第4月曜
料金:300円ほか
●毛越寺「大泉池は映し鏡のような美しさ」
12世紀半ば、平泉を拠点とした奥州藤原氏の二代・基衡から三代・秀衡の時代に伽藍(寺の建物)が整えられた。
「薬師如来を本尊とする本堂の前面にある大泉池は発掘調査をもとに当時の姿に近い形で復元されています。仏堂と『苑池』が一体となって、800有余年を経たいまも、荘厳かつ壮大な世界観を生み出していた平安時代の寺院庭園の美しさを楽しむことができます」(小野さん)
住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉字大沢58
開園時間:8時半〜17時
休園日:無休
料金:700円ほか
●恵林寺「家康ゆかりの赤門も見どころ」
京都の世界遺産『天龍寺』や苔寺と呼ばれる『西芳寺』を手がけた夢窓疎石の作庭と伝わる恵林寺の庭園。
「大きな心字池に中の島が配された『池泉回遊式庭園』は、眺める位置によって表情が変わり、見飽きません。奥の築山から流れる石組も見どころです」
武田信玄の菩提寺であるこの寺の四脚門(通称・赤門)は、一度消滅したが、徳川家康が再建。国の重要文化財に指定されている。
住所:山梨県甲州市塩山小屋敷2280
開園時間:8時半〜16時半
休園日:無休
料金:500円ほか
●アートビオトープ 那須『水庭』「五感で体感する新しい庭」
「水庭は、現代建築家の石上純也さんが手がけた約300本の樹木が立ち並ぶ雑木の庭です。この庭のあるアートビオトープ那須は宿泊施設でもありますが、ホテル建設のために伐採予定だった樹木を生かして庭園が造られました。宿泊しない場合は、ガイド付きの見学ツアー(お土産付き)に参加して、庭を巡るのも楽しいですよ」(イトウさん)
住所:栃木県那須郡那須町高久乙道上2294-3
開園時間・休園日:問い合わせを
料金:ガイド付き水庭ツアー2970円(要予約)ほか
●練馬区立牧野記念庭園「朝ドラ『らんまん』にハマった人、必見!」
植物学者・牧野富太郎博士が1926(大正15)年から亡くなるまでの30年余りを過ごした住居と跡地を庭園として開放。園内には、博士が命名したスエコザサ、ヘラノキのほか、実際に博士が植えたとされるサクラ「仙台屋」、ダイオウマツなどの木々が生育する。
入り口付近では、朝ドラ『らんまん』の主人公・万太郎(神木隆之介)が好きな『バイカオウレン』が見られる。展示室では博士が描いた植物画、標本、植物採集時に使ったはさみなどの愛用品が展示され、博士がどこからか現れそうな雰囲気だ。
住所:東京都練馬区東大泉6-34-4
開園時間:9〜17時
休園日:火曜、年末年始
料金:無料
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2023年7月6日号