ライフ

認知症の治療薬はどこまで効果があるのか? 医師が海外での状況、新薬の実効性を解説

認知症治療薬はどこまで期待できる?(イメージ)

認知症治療薬はどこまで期待できる?(イメージ)

 2025年には国内の患者数が730万人を超えるとされる認知症。診断されると、症状の悪化を遅らせようと薬が処方されることが多い。しかし、上昌広医師(医療ガバナンス研究所理事長)は認知症は薬を飲んでもほとんど効果がないと言い切る。

「実際、フランスでは認知症治療薬の保険適用を中止しています。使われている治療薬も、臨床試験では正直そこまで顕著な効果は出ていません。それでも使われているのは、認知症と診断された時に何かしたいと思う人情があるからですし、製薬会社も、増加の一途を辿る認知症患者に使ってもらえる薬のPRに余念がないからでしょう」

 エーザイが開発し米国で承認されたアルツハイマー病新薬「レカネマブ」は根本治療薬として期待されるが、上医師は、その実効性は限定的だとする。

「気になる副作用もあるし、薬価も高額になると思われる。また、レカネマブは認知症初期に将来の進行抑制に働くもので、すでに進行した患者に効果のある薬でもありません。現状は薬を飲むよりも、できる範囲で仕事をするとか、体を動かしてアクティブに過ごすなどのほうが、進行抑制が期待できると思います」

 また、高齢で眠りが浅くなることで生じる夜間の睡眠時間の不足を補ううえで、昼寝が認知症予防に効果的とされていたが、近年は長時間の昼寝をすると認知症になりやすいとの研究結果が出てきている。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が言う。

「2022年3月に米ハーバード大などの研究チームが発表した論文で、高齢者が長時間の昼寝をすると認知症リスクを高めると報告されました。認知症でない80歳前後の高齢者を14年間追跡調査したところ、1日あたりの昼寝が1時間以上の人は、1時間以内の人に対しアルツハイマー病発症率が1.4倍だったというのです」

 長時間や頻繁な昼寝が夜の睡眠の質の低下につながることが原因として考えられるという。

「それにより、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβなど『タンパク質のゴミ』が脳内に溜まる可能性が高まると考えられます」(同前)

 生活習慣のわずかな違いにも注意を払いたい。

※週刊ポスト2023年6月30日・7月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト