ロシアや欧州に駐在する北朝鮮の貿易駐在員らが次々と亡命を求めており、その数は直近で40人にも及んでいることが明らかになった。北朝鮮では4月以降、新型コロナウイルスの流行緩和に伴い3年間に及んだ国境封鎖を解除し、駐在員に帰国を指示していた。しかし、帰国を拒否する駐在員が続出しており、北朝鮮当局は本国から秘密警察を派遣し行方を追っているという。
米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」がロシアメディアの報道として伝えたところでは、ロシア極東部のウラジオストク市に拠点を置く北朝鮮貿易代表団の駐在員の妻とその息子が6月4日、駐ウラジオストク北朝鮮領事館前でタクシーに乗り、そのまま姿を消すという事案が起きた。
ロシア当局は北朝鮮側の要請に応じて、「行方不明者警報」を出し、2人の顔写真を掲載したビラを公開し、行方を追っているという。
一方、韓国・東亜日報系のケーブルテレビ局・チャンネルAは、ヨーロッパ駐在の北朝鮮の参事官クラスの外交官がその家族とともに亡命し、一家は現在、韓国政府の保護を受けていると報じた。この一家以外にも、ヨーロッパ駐在の貿易駐在員らが逃亡・亡命するなどしており、その数は40人に迫るとも伝えている。
北朝鮮の外交官や貿易駐在員らの亡命はしばしば伝えられてきたが、短い期間に40人にも及ぶ人数が亡命するのは、異例ともいえる状況だ。
この背景には、新型コロナウイルスの世界的な流行で、北朝鮮当局が国境を閉ざしたことで、外交官や駐在員、留学生らの海外生活が3年以上にも延びたことがある。北朝鮮本国に戻れば、再び一党独裁体制下の抑圧された生活が待っており、いったん自由を謳歌していた彼らにとっては、帰国自体を耐えがたいと考えたことは容易に想像できる。
また、昨年の大統領選で、北朝鮮との融和路線をとっていた文在寅政権から、対北強硬路線をとる尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に移行したことも脱北を望む人々が増えた大きな要因とみられる。