昨今のシニアトレンドのひとつといわれる“素材丸ごとお菓子”【*】。野菜の素揚げや小魚スナック、ドライフルーツなど「素材を生かした自然派おやつ」のことで、シニア世代に不足しがちな栄養素が摂れるとジワジワ人気を集めている。
【*ハルメクホールディングスのシンクタンク「生きかた上手研究所」が昨年末に発表した「2022—2023シニアトレンド」のひとつに素材丸ごとお菓子が挙げられた】
ジャンクなスナック菓子よりはいいに違いない素材丸ごとお菓子だが、本当に食べていいことがあるのだろうか?
「中高年以降は、カルシウムやたんぱく質、食物繊維が不足しがちですが、家族も少なくなると、毎日栄養バランスを考えて料理をするのも大変。 そんなとき、お菓子で栄養素を補給できるのはすごくいいことですよね! 健康志向の昨今は、味・品質ともに上がっていると思います」
と言うのは、管理栄養士の松田真紀さん。
いまや、素材丸ごとお菓子はスーパーマーケットやコンビニエンスストアでもよく見かけるようになったが、中高年女性の隠れたベストセラーが、『通販生活の薄焼いわし』。
女優の香山美子などが出演するCMを、一度は見たことがあるのではないだろうか。
『カタログハウス』の森川潤さんは、開発の経緯を次のように語る。
「高齢者は転倒骨折によって運動不足を招き、それが原因で筋肉量が低下して、また骨折を繰り返してしまうという悪循環の報道を見聞しました。
そんな高齢者がおやつ感覚でカルシウムを補給できたらと考え、『薄焼いわし』が生まれました」
いまは、本来なら廃棄される野菜や果物の皮や芯、種などの部分を利用した商品も登場している。
「ふだんは食べないところですが、むしろその部分にポリフェノールや食物繊維などが豊富に含まれており、栄養価が高い。食品ロスも防げて一石二鳥です」(松田さん)
野菜や果物の素焼き菓子を販売する『NomuRin』も、規格外で市場に出せない食材を使い、食品ロス問題の解決に取り組んでいるという。
「大きさや味を調整するために間引きされたりんごだって、品質に問題はありません。『何とか活用してほしい』と農家さんから相談があり、素焼きお菓子として商品化しました」(同社工場長の布川健太郎さん)
健康・環境の両面で利点の多い素材丸ごとお菓子だが、注意も必要だ。
「市販の商品の中には味が濃く、塩分が多いものもありますので、食べすぎには注意です」(松田さん)
ちなみに、厚生労働省が推奨している1日の塩分摂取量は、女性で6.5g未満(「日本人の食事摂取基準2020年版」より)。
パッケージに記載の食塩相当量もチェックし、あくまで食事のサポートとして楽しんでほしい。
【プロフィール】
管理栄養士・松田真紀さん/日本抗加齢医学会認定指導士、アンダーザライトヨガスクール認定講師。各メディアで活躍するほか、兵庫県神戸市で発酵デリ専門店「hakko matsuda slow food okamoto」を経営する。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2023年7月13日号