各局の春ドラマがクライマックスを迎え、さらに夏ドラマがこれから始めるという期待感が高まっている今の時期。春ドラマの最終回と夏ドラマの初回放送が重なる珍事が発生している。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがその背景について解説する。
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2日夜、『日曜の夜ぐらいは…』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の最終回が放送されます。こちらは4月30日にスタートした春ドラマで、それぞれ悩みや生きづらさを抱える女性3人がふとしたきっかけで意気投合。一緒に買った宝くじが当選したことで、カフェ「サンデイズ」のオープンに向けて動き出す様子が描かれてきました。
しかし、驚くべきは同じ22時台の「日曜ドラマ」(22時30分~)で『CODE―願いの代償―』(読売テレビ・日本テレビ系)の初回が放送されること。こちらは7~9月に放送される夏ドラマの作品であり、「どんな願いも叶える」という謎のアプリ・CODEを手に入れた刑事が恋人の死の真相に迫るクライムサスペンスです。
つまり、2日夜は「別クールの最終話と初回が同じ時間帯でバッティングする」ということ。なぜこのような珍事が発生したのか。その背景には異なる事情と思惑があります。
春ドラマと夏ドラマそれぞれの事情
まず『日曜の夜ぐらいは…』が放送されている日曜22時台は、今春に新設されたばかりのドラマ枠。
初回の放送が春ドラマの話題作がすべてはじまったあとであり、世間が大型連休の4月30日だったのは、新ドラマ枠だからこその慎重な編成戦略でしょう。同作は現在連続ドラマのスタンダードである全10話と特別長いわけでもないにもかかわらず、最終回が7月に食い込んだのはこのような背景がありました。
また、そもそも春ドラマは終盤の最終月が3月・9月の改編期や12月の年末編成などに当たらず、大型のバラエティ特番も少ないため、他の季節より最終回の放送が遅い傾向があります。事実、春ドラマで同じ日曜夜に放送された『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBS系)と『だが、情熱はある』(日本テレビ系)の最終回は1週前の6月25日でした。その意味で『日曜の夜ぐらいは…』は、各所への調整こそ必要なものの「7月2日ならOKだろう」という意図は理解できます。