歌舞伎座(東京・中央区)の「七月大歌舞伎 昼の部」に主演予定だった市川猿之助容疑者(47才)が“口上”を述べているのは、スポットライトの当たる舞台上でもなければ、観客相手でもない。無機質な部屋のなかで、取調官と向かい合っている──。
6月27日、母親(享年75)への自殺幇助容疑で逮捕された猿之助は連日、取り調べを受けているとされる。歌舞伎役者の父・市川段四郎さん(享年76)と母の死因は、司法解剖の結果、向精神薬中毒の疑いとされ、両親の遺体からは、猿之助が処方されていた2種類の睡眠導入剤の成分が検出された。
「取り調べでは“自分が10錠用意し両親が自らのんだ”“砕いて水に溶かして、両親がのみやすいように準備した”と具体的に供述。水に溶かしたら水が青色になった、ということまで詳細に語っているようです。また、両親が睡眠薬をのんで意識が混濁したあとに、“顔にビニール袋をかぶせ、養生テープで留めた”とも話しています」(捜査関係者)
隠すことなく、すべてを詳らかに語っていると見える一方で、供述には疑問が残る。
「数千錠をのまなければ致死量に至らない睡眠導入剤なので、たった10錠で中毒死する可能性は低い。高齢とはいえ、それが2人同時に起きうる確率は、天文学的に低いと言わざるを得ません。
また、ビニール袋や薬のパッケージは自身で家の外のゴミ捨て場に捨てに行っています。それが自殺を覚悟した人間の行動としては違和感があり、当局は“自身の犯罪性を隠すための、証拠を隠滅する行為”と捉えているようです」(全国紙社会部記者)
今後の捜査では段四郎さんの死の経緯も注目される。
「段四郎さんは末期がんを患っており、寝たきりの状態だったそうです。自殺の意思があったのか、それをはっきりと明示できたのかさえ、判然としません。仮にビニール袋をかぶせたことが段四郎さんの死期を早めたとしたら、殺人容疑も視野に入ってくる。
両親に自殺の意思があったとしたら、遺書はおろか、書き置きの類いすらないことも不自然です。しかも、伝統と格式を重んじる歌舞伎界に身を置く両親が、パジャマ姿で最期を迎えるでしょうか。父は名跡を継いだ歌舞伎役者、母は京都の友禅図案家の家柄に生まれ、梨園の妻となった人です。最期の姿としては違和感が残ります」(前出・全国紙社会部記者)
それでも猿之助は一貫して「一家心中」を主張している。
「“家族会議をして、みんなでさよならすることにした”と供述しているように、一連の行動は『親の同意』があったことを強調している。むしろ、“自分は親の意思を尊重して手伝っただけ”と開き直っているとも言えます。警察が殺人容疑を視野に入れているなら、“容疑を否認している”とも捉えられるわけです」(別の全国紙社会部記者)
段四郎さんは、ここ数年は歌舞伎役者として一切稼働していない状態だった。一人っ子である猿之助は、澤瀉屋のみならず、一家においても経済的に中心的存在だった。
「猿之助さんが『自殺』を持ち出せば、ご両親は同意せざるを得ない状況だった可能性は否定できません。自殺を強要され、拒否できない状況だったなら、これ以上悲しいことはない。それを逆手にとって猿之助さんが『親の同意』を主張するなら、それはあまりに身勝手な理屈でしょう」(歌舞伎関係者)
※女性セブン2023年7月20日号