大ヒット公開中の『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』。6月25日には興行収入130億円を突破し、“コナンフィーバー”はとどまるところを知らない。公開から約80日、あの感動を大迫力のスクリーンで楽しめるチャンスもあとわずかとなった。既に映画を見たという人にこそ知ってほしい、何度だって楽しめる“いつもひとつ”じゃない注目ポイントを映画ライター・のざわよしのり氏に聞いた。
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本作の大きな魅力は“スクリーン映え”する映画だということ。「劇場版コナン」の名物になっている大型施設の爆発劇は本作も必見で、クライマックスのスリルを盛り上げるひとつの鍵となっている。劇場版第一作『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』以降、時代と共に進化を続ける爆破エフェクトは、大迫力のスクリーンでこそ見届けてほしい。
さらに、一度見ただけでは見逃しかねない人物描写にも注目。監督の立川譲氏はジャズに取り組む3人の若者の挫折や再起を描いたアニメ映画『BLUE GIANT』を手がけたが、『黒鉄の魚影』でも繊細な人物描写が光る。
例えば、日頃はクールな灰原哀が歩美の布団をそっとかけ直す仕草には、実年齢は年上の灰原の優しい素顔が垣間見える。ほかにも、作品後半のミステリーに絡むある人物の仕草など、細やかな動作の一つひとつが人物に現実感と厚みを持たせているのだ。
人物描写だけでなく映画ごとに変わるタイトルバックのデザインも秀逸。前作『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』は、ハロウィンに沸く渋谷駅周辺、本作は潜水艦の中をカメラが進みながらナレーションがかぶさる。同じメロディのメインテーマでも1作ごとに観客を飽きさせない工夫、これから始まる物語へ誘う没入感抜群な演出の妙味は、何度も繰り返し味わいたい。
そして何といっても本作の見どころは灰原にフォーカスしたドラマだろう。コナンとはあくまでよき協力者の関係…のはずだが、これまでの作品ではコナンを本気で心配したり、やきもちを焼く表情も度々描かれてきた。そして本作では、コナンこと工藤新一に寄せる心情がより強い輪郭をもって描かれる。果たして、彼女の思いは届くのか──。
今日的な顔認証システムや、防犯カメラを利用したトリックなど、推理ものの仕掛けもふんだんな劇場版コナン。何度見ても楽しめる細部へのこだわりを感じに、ぜひもう一度劇場に足を運んでほしい。
※女性セブン2023年7月20日号