1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、3歳未勝利馬を勝たせるための工夫についてお届けする。
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今の時期、午後最初のレースはだいたい2歳馬による新馬戦(メイクデビュー)。来春のクラシックを目指す若駒がフレッシュな雰囲気を醸し出しています。強い勝ちっぷりで早くも大器と目されている馬もいますが、たとえ初戦で結果が出なくても、レース内容に見るべきものがあれば、次走以降への期待も高まりますし、問題が見つかればじっくり立て直すこともできます。
一方、まだ一つも勝っていない3歳馬はのんびりしていられません。「3歳未勝利戦」が組まれているのは9月の第1週まで、あと2か月ほどしかない。
開業初年度の昨年は藤沢和雄厩舎から引き継いだこともあって、この時期3歳未勝利馬は1頭だけ。その馬も無事9月の未勝利戦に勝ってくれたので、勝ち上がることができなかった3歳馬はいませんでした。
しかし今年は3歳馬を20頭以上、デビューから預からせていただいています。なかにはセリで1億円近くした馬や、素晴らしい良血馬、クラブの看板馬などもいます。まず一つ勝たせるというのは、調教師として最低限の責任。僕を信頼して預けていただいたのだから、何とか期待に応えなければと日夜頭と体を動かしています。
ジョッキー時代、騎乗依頼をいただきながら結果が出せなかった馬については、ダートがいいのではないかとか、長い距離がよさそうという適性だけでなく、まだ成長途上なので思い切って休ませることも必要だというような提案をすることもありました。しかし、それはあくまで関係者の一員としての意見。調教師はジョッキーの意見だけでなく、オーナーの希望やスタッフの考えも加味して総合的に判断しなければなりません。