安倍晋三・元首相が街頭演説中に凶弾に倒れてから、7月8日で1年を迎える。安倍氏の絶大な影響力は、むしろ死後に高まったようにすら思えてくる。改めて、そこまでの権勢を誇った安倍晋三氏は、一体どのような人物だったのか。立憲民主党参院議員の辻元清美(63)氏が振り返る。
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安倍さんとは国家観が違い、国会では互いの理念、信念に従って相当議論をしました。
最初は自衛隊イラク派遣問題の時に、官房副長官をされていた安倍さんが自衛隊のイラク派遣を「人道支援で、ナイチンゲールと一緒だ」というようなことをおっしゃった。私が『日曜討論』(NHK)で「ナイチンゲールなら敵も味方も一緒で、例えばアフガニスタンに行ったらタリバンも助けるし、中立でどちらも助ける。が、タリバンを捕まえるというのであればナイチンゲールになれないから、自衛隊派遣は無理です」と反論したら、すぐ電話が掛かってきた。「辻元さん、ナイチンゲールについて、何で反論するんだ」と。
自民党の議員には野党の発言にいちいち突っかかって反論してくる人なんていなかった。皆懐が深かったから。だから驚いた。官房副長官が私のような若手議員の発言をチェックして反論してくるのは異例だったから。それは圧力というんですけど、私は言われても黙るわけではないですので、反論した。そこから安倍さんという政治家を意識するようになりました。
最後にお会いしたのは、総理を辞められた後の菅政権の時で、議員会館の廊下でばったり。私が、「安倍さんいなくなってさみしいねぇ。もっと国会で安倍さんと議論したかったわ」って言ったら、「いやあ、菅さんとやってくださいよ~。僕はホッとしています」とおっしゃっていた。
安倍さんの人柄と行なった政治は分けて評価しなければならないと考えている。安倍政治はとにかく日本を停滞させた。経済成長率は下がりっぱなし、企業の競争力も下がり、日本そのものを停滞させたと思います。賃金が上がっていないのは日本だけでしょ。