ライフ

エステ返金トラブル解決の実態とは?国民生活センターが公開した和解プロセス

エステ店(AC)

エステの返金問題について国民生活センターが注目している(AC)

 エステの返金問題がどのように解決されたのかが公表された。2023年6月28日、国民生活センターが重要性が高いとして公開した。

 国民生活センターでは、紛争解決委員会を通して消費者のトラブルの解決に取り組んでいる。その多くは非公開だが、重要な事例については法律に基づいて公表する。それは似たトラブルの解決につながると考えられる。

 今回、同センターは公開したADR(裁判外紛争解決手続)の結果を報告する中で、重要なトラブル解決の事例を20件報告。その一つとして「エステティックサービスの返金に関する紛争」の詳細について報告した。

※ADRとは、従来の訴訟手続とは異なる観点から紛争に対処するための手法。関係者全員が納得できる柔軟な紛争解決を目指す。今回の場合は、国民生活センターが、あるエステでの返金トラブルについて当事者間の話し合いによる解決に取り組んだもの。

 ヒフコNEWSでも伝えているが、若い世代を中心に、エステのトラブルは急増している。このような背景から、身近で重要な事例として見なされたものと考えられる。

エステ返金トラブル、法律違反も

 今回のケースでは、ポスティング広告をきっかけとしてエステを開始した人(以下、Aさんと呼ぶことにする)の返金問題である。

 Aさんは2020年3月、コロナの流行や通院などの事情で、2020年8月を有効期限とする10万円分の未使用チケットを消化しきれないと返金を求めた。

 エステ側は8万円分の追加購入と引き換えに、チケットの有効期限を2021年12月末まで延長すると申し出て、Aさんはチケットの追加購入に応じた。ところが、コロナ自粛などもありチケットを使えず、2021年8月、Aさんは18万円の返金を求めた。

 エステ側は返金を拒否したため、国民生活センターを交えて協議した。しかし、2つの重要な理由により、エステ側は返金する必要があると判断された。

 第一に、Aさんとエステ側との間に、サービスが提供されていたにもかかわらず契約書が交わされていなかったこと。チケットは口頭で、メッセージアプリで管理されているのみだった。第二に、エステは特定継続的役務提供に当てはまり、中途解約が認められているので、途中解約を拒否することが違法であったこと。

 まず契約書が交わされていなかったため、クーリング・オフ期間が始まっていないと判断された。というのは、クーリング・オフのルールにより、エステの場合、契約から8日間は無条件で契約を取りやめられる。報告書ではこの問題について次のように書いている。

 相手方が行っているのはエステティックサービスであることから、特定商取引法における特定継続的役務提供に該当し、書面交付義務があるが、相手方においては契約書面を交付していないことからクーリングオフ期間が起算していないと考え得る、と指摘した。

 さらに、中途解約についても、エステティックサービスは特定継続役務提供の一つであり、そのため最初に返金を求めた時点で中途解約を認めるべきだった。つまり返金拒否そのものが法律違反だったことになる。

 最終的は、エステ担当者の法律違反は明らかでもあり、エステ担当者が18万円から1割を引いた約16万円を返金するという形で和解に至った。

美容医療とも無縁ではない

 今回のケースはエステだったが、これは美容医療でも関係する問題といえる。というのも、特定継続役務提供は7種類が指定されており、その一つとして美容医療があるからだ。

 美容医療においても中途解約は起こり得るが、特定継続役務提供であるため中途解約は認められる。

 今回のエステのケースはルールが理解されておらず、トラブルになった。ルールを知っておけば、交渉はスムーズだった可能性はある。

 何らかのトラブルがある場合、早めに消費者ホットライン(188)のほか、消費生活センターなどに相談することで、トラブルを早期に解決できる可能性はある。

参考文献
国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和5年度第1回)

[報告書本文] 国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和5年度第1回)[PDF形式]

紛争解決センター(ADR)

特定継続的役務提供

クーリングオフ

「エステティックサービスの解約返金相談急増 その施術本当に必要?」

成人年齢18歳に、10代の脱毛エステや医療のトラブル相談が急増

なぜ大阪のエステ脱毛は書類送検に?女性のやけど事件の背景を大阪府警に聞いた

あなたの美容医療、大丈夫?大手弁護士事務所のベリーベスト法律事務所が被害情報収集を開始

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

関連キーワード

トピックス

カジュアルな服装の小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットで話題》小室眞子さん“ゆったりすぎるコート”で貫いた「国民感情を配慮した極秘出産」、識者は「十分配慮のうえ臨まれていたのでは」
NEWSポストセブン
宮城野親方
《白鵬に若手親方から評価の声出るも…》「宮城野部屋の復活」が先送りされるウラに「相撲協会執行部が“第2の貴の乱”を恐れている」との指摘も
NEWSポストセブン
気持ちの変化が仕事への取り組み方にも影響していた小室圭さん
《小室圭さんの献身》出産した眞子さんのために「日本食を扱うネットスーパー」をフル活用「勤務先は福利厚生が充実」で万全フォロー
NEWSポストセブン
“極秘出産”していた眞子さんと佳子さま
《眞子さんがNYで極秘出産》佳子さまが「姉のセットアップ」「緑のブローチ」着用で示した“姉妹の絆” 出産した姉に思いを馳せて…
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《日本中のヤクザが横浜に》稲川会・清田総裁の「会葬」に密着 六代目山口組・司忍組長、工藤會トップが参列 内堀会長が警察に伝えた「ひと言」
NEWSポストセブン
5月で就任から1年となる諸沢社長
《日報170件を毎日読んでコメントする》23歳ココイチFC社長が就任1年で起こした会社の変化「採用人数が3倍に」
NEWSポストセブン
石川県をご訪問された愛子さま(2025年、石川県金沢市。撮影/JMPA)
「女性皇族の夫と子の身分も皇族にすべき」読売新聞が異例の提言 7月の参院選に備え、一部の政治家と連携した“観測気球”との見方も
女性セブン
日本体操協会・新体操部門の強化本部長、村田由香里氏(時事通信フォト)
《新体操フェアリージャパン「ボイコット事件」》パワハラ問われた村田由香里・強化本部長の発言が「二転三転」した経過詳細 体操協会も調査についての説明の表現を変更
NEWSポストセブン
岐阜県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年5月20日、撮影/JMPA)
《ご姉妹の“絆”》佳子さまがお召しになった「姉・眞子さんのセットアップ」、シックかつガーリーな装い
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《極秘出産が判明》小室眞子さんが夫・圭さんと“イタリア製チャイルドシート付ベビーカー”で思い描く「家族3人の新しい暮らし」
NEWSポストセブン
ホームランを放ち、観客席の一角に笑みを見せた大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平“母の顔にボカシ”騒動 第一子誕生で新たな局面…「真美子さんの教育方針を尊重して“口出し”はしない」絶妙な嫁姑関係
女性セブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日の親子スリーショット》小室眞子さん出産で圭さんが見せた“パパモード”と、“大容量マザーズバッグ”「夫婦で代わりばんこにベビーカーを押していた」
NEWSポストセブン