「ジムオタク」──丸太のような二の腕の屈強なメジャーリーガーたちですら、敬意を込めて大谷翔平(29才)をそう呼んでいる。「投」「打」の二刀流で活躍を続け、打者としてはホームランキングもいよいよ現実味を帯びてきた。特に7月1日の30号ホームランは圧巻だった。高い放物線を描いた推定約150mの特大弾は、今季のメジャー最長飛距離を記録した。
昨年のシーズン終了直後、大谷は1年を振り返り「フェンス手前で失速する打球が少し目立った。もうひと伸びできるフィジカルやスイングの強さがあれば、もっといい数字が残ると思います」とパワー不足ともとれる課題を口にしていた。
メジャー移籍時にはまだ線の細さが感じられた大谷の体は、いまや当時と比べて明らかに大きく、ムキムキに変化した。パワーアップに成功した要因のひとつが、トップアスリートがこぞって通う最先端ジムでのトレーニングだった。今年1月に帰国していた大谷は、連日、都内の複合ビルに入る「ジム」に足を運んでいた。
「大谷選手が利用しているジムは、低酸素環境下でのトレーニングができる施設です。マラソン選手などが行う“高地トレーニング”がもとになっていて、普段よりも多く酸素を取り入れようとするために持久力の強化につながるなどのメリットがあります。大谷選手と同学年でメジャーリーガーの鈴木誠也選手(28才)や競泳の池江璃花子選手(23才)、陸上の桐生祥秀選手(27才)などのトップアスリートが利用しています」(スポーツジャーナリスト)
全面ガラス張りで、開放感を味わいながらトレーニングができるジム内には、ランニングマシンや筋トレマシンがずらりと並び、人工芝のフリースペースも完備されている。大谷は通訳の水原一平さん(38才)の運転するポルシェで毎日決まった時間にジムを訪れ、毎回約4時間のトレーニングを行っていたという。
Tシャツ姿で入念な準備運動とストレッチを済ませると、重さの違う数種類のボールを壁に投げ込む“壁当て”を行い、1990年代にダイエット器具として大流行したボディーブレードのような器具を使って肘肩を鍛える。商売道具であるバットを振り込んだ後は、ケトルベル(やかん形のダンベル)を持っての片足スクワット。ここまでが前半約2時間のルーティンだ。その後、重い重量のバーベルを使ったトレーニングに移行する。
意外なことに、ジム内のネットに区切られた一角で行ってはいるものの、一般利用者の視界に入る場所だという。大谷の筋トレを目撃したことのあるアメリカンフットボール選手は、その光景を驚きをもってこう証言した。
「まず、彼の体がテレビで見るよりもはるかに分厚くて驚きました。筋トレメニューは“筋トレBIG3”と呼ばれるベンチプレス、スクワット、デッドリフトでした。どれも基本的な筋トレなのですが、そのプレート(重り)の負荷が怪物級なんです。デッドリフトでは、230kgを楽々と上げちゃうんですよ。230kgでトレーニングしているのは、彼ぐらいですね。ジム内にはいろんなマシンがあるのですが、シンプルな筋トレをただただ繰り返していました」