相当な時間を要した末に、ついに虎の元エースにエンジンが掛かってきた。シーズン当初から散々なピッチングが続いていたアスレチックスの藤浪晋太郎(29才)が、9日のレッドソックス戦で4番手として登場し、打者2人をピシャリと抑えて降板。前半戦は6試合連続無失点で締めくくって、長らく2ケタだった防御率は9.00まで改善した。
「藤浪のこれまでの成績なら、通常は即マイナー行きですが、ラッキーだったのはチームの成績がボロボロだったことです。今季のアスレチックスは開幕当初から負けまくり、50試合目で40敗に到達。おまけにチームは本拠地移転が噂されていて、球場は清々しいまでにガラガラで、ファンの厳しい目にさらされることがありませんでした。
一説には、藤浪は本人の同意無しにはマイナー降格はない契約になっており、“使わないと損”だから起用されているとも言われていますが、ノープレッシャーの状況で投げ続けているうちに、ようやく調子が上向いてきた。もともと球速だけならメジャーでも一級品ですから」(スポーツ担当記者)
阪神時代には、すっぽ抜ける剛速球に相手チームが恐れをなし、主力を休ませたり、左打者をずらりと並べたこともあった。そんな藤波の制球が定まった一因と言われているのが、女房役の捕手のキャッチングだ。
「藤浪の登板機会が増えるにつれて目につくようになったのが、捕手の構える位置です。普通なら捕手は、1球ごとに内角や外角にミットを動かしますが、藤浪が投げる時のアスレチックスの捕手は常にど真ん中に構え、藤浪は全力でそこに投げ込むだけ。ネットでは、名作野球マンガ『タッチ』の上杉達也のようだと囁かれています。これについて捕手や監督はコメントしていませんが、“どうせ真ん中に構えても、そこには来ないんだから、適当にストライクゾーンに散れば儲けもの”といった感覚なのかもしれません。
これは一見、乱暴なやり方に見えますが、日本を代表する名捕手・古田敦也はかつて、『(チームメイトの)石井一久が投げる時は、厳しいコースには構えなかった』と明かしています。その理由は、ストライクゾーンぎりぎりの厳しい場所に構えても、そこに来るはずがないから。その代わり、球の威力があるので、“だいたいこのあたりに来ればOK”というあたりに構えていたそうです」(フリーの野球記者)