1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、3歳未勝利戦で実感する、勝たせる難しさについてお届けする。
* * *
6月から2歳戦がスタート。7月15日(土)にはこの世代最初の重賞・函館2歳ステークスが行なわれますが、その一方で生き残りを懸けた「3歳未勝利戦」も熾烈になってきています。
蛯名正義厩舎でも苦闘の真っ最中。先月は2週続けて3歳未勝利馬が勝ってくれましたが、それでもまだお預かりした3歳馬の半数が勝ち上がっていません。
JRAに登録する馬の数が増えてきたこともあり、特にこの時期はまず3歳未勝利戦に出走させるのが一苦労です。5着以内に入れば一定期間内は次走の優先出走権が与えられますが、レース後の疲労が著しかったり、調子が今一つだったりすることもある。権利があるからといって、無理に出走させるか悩んだりもしますね。
6着以下だったりすると、次に出走できるまで1か月以上間が空いてしまうこともあるし、勝ち馬から大きく離されると、「タイムオーバー」で長期間出走できなくなります。さらに3レース続けて9着以下だった馬は2か月間もレースに出走できません。俗に言う「スリーアウト制」で、この時期にノックアウトされると、進退を考えざるを得ません。
時代の流れで、いかに早く勝たせるかというのが問われるようになりました。限られた期間内で結果をだすために、調教過程を組み立てていくしかない。体質が弱かったり、成長がちょっと遅れていたりする馬は勝ちづらくなってきました。
どこの厩舎もここにきて必勝態勢で来ているので、未勝利戦とは思えないような強い馬に当たることもあります。ずっと上位に来ているような馬でも「次はこの馬の順番だ」と待っているわけではありません。調整からスタートからすべてうまくいっても勝てないことがあるのです。
やはり勝つために何かを変えなければならないと思います。といっても、ダート替わりや距離短縮・延長など、すでにやり尽くしていることも多い。