東京・世田谷区のビルの屋上に、野菜の水耕栽培を行う農園『AGRIKO FARM(アグリコファーム)桜新町』がある。農作物だけではなく、水槽には小魚も育ち、すべての生産物は出荷。消費者の口に届く循環のシステムが成立している。これらを発案、構築したのは女優の小林涼子だ。
2008年放送の『魔王』(TBS系)のヒロイン役で注目を浴びてから15年。直近では夏ドラマ『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系、7月13日スタート)に出演する。ビジネスではSDGsに徹底的にこだわり、次々に新しいアイデアを農業に投入している。胆力のある働きぶりは何が原動力なのか。【前後編の後編。前編から読む】
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「2014年から少しずつですが、農業に関わって、株式会社AGRIKOを立ち上げたのは、コロナ禍の2021年です。いろいろ勉強も重ねて思慮深く起業に向かったつもりではいましたけど、途中でやはり迷う時期はありました。自然も農業も好きだけど、仕事にしたらまた見解が変わるかもしれないですし。そんなときに起業家の先輩、知り合いから『やっちゃうか、やらないか、しかない』と何度も言われて……。最終的にはやっちゃうか! でした」(小林涼子、以下同)
小林がたびたび通うようになった、新潟県の米の生産地。そこで小林涼子が見たものは、とても持続可能とは思えない、農業の人手不足、高齢化の実態だった。そのまま農地が荒れていくことはとても見過ごせず、農林水産省の『農福連携技術支援者』という資格の取得から起業へと一気に踏み込んだ。
「起業を考えた当時、芸能界でしか仕事をしたことがなかったから、パソコンさえ使えなかった。『何が分からないのか、分からない』状態で始まりました。もう辛くて、泣きながら『すみません、必要な書類はどれですか』と、各所へ聞いたり……。そんなとき、お世話になっている士業の先生たちがアドバイスをしてくれたので、なんとかなったようなものです」