美しい肌を手に入れるために必要なのは高価なエステでも美容グッズでもなく、正しい知識。汗や皮脂が出やすいいまの時期に知っておくべきなのは「顔の洗いすぎ」を避けることだ。あいこ皮フ科クリニック院長の柴亜伊子さんが言う。
「特に、熱いお湯は絶対にNG。43℃以上のお湯は老化の原因になる活性酸素を増やします。また、熱いお湯で洗うと必要な皮脂も肌内部の保湿因子も流れ出てしまい、乾燥肌を招く。すると肌は自分を守ろうと、さらに皮脂を分泌する悪循環に陥ります」
かといって、冷やしたスプーンや氷のうなどで肌を冷やす美容法も、やりすぎは禁物。肌がキュッと引き締まるのは一時的で、やりすぎると皮膚組織が損傷したり、赤みや色素沈着、凍傷の原因になる。
毛穴の汚れを落としたくても「毛穴パック」には要注意。密着力が高いため、はがす際の刺激で皮膚と毛穴に炎症が起こりやすく、よけいに皮脂が分泌されることもある。美容・医療ジャーナリストの海野由利子さんは「角質ケア」の危険性を指摘する。
「近頃再び『角質ケア』のブームが起きていますが、毎日洗顔しているなら、そうそう角質が厚くたまるようなことはありません。“肌のターンオーバーは早い方がいい”と考えて表面の角質を必要以上に取りすぎると、うるおい成分の少ない未熟な肌細胞が強制的に表面に押し上げられます。それらはバリア機能が低いため紫外線などのダメージを受けやすく、肌トラブルや老化を早める原因になるのです」
当然ながら、肌の角質をこすり落とすスクラブやゴマージュも控えた方がよさそうだ。国立病院機構東京医療センター形成外科科長の落合博子さんが言う。
「そもそも、肌の角質層を無理にはがすと、バリア機能や表皮細胞の機能が低下する原因になります。それに加え、刺激を与え続けると肌が黒ずむこともあります」(落合さん・以下同)
必要なのは「ワセリン」と「日焼け止め」だけ
角質層とは、肌のもっとも外側の層のことで“食品用ラップ1枚分”ほどの厚みしかない。古い角質は何もしなくとも垢となってはがれ落ち、新しい角質に入れ替わる。化粧水などの容器にある「肌に浸透する」という文言をよく見ると、必ず近くに小さく「角質層まで」と書かれているはずだ。
「角質層には、紫外線や有害物質などの異物が肌内部に入ってくるのを防ぐ『バリア機能』があるため、医薬品ではない化粧品は、角質層より奥には浸透しません。つまり化粧品は、肌の状態を“よく見せる”“安定した状態を保つ”作用はあっても、角質層の下にある真皮まで入り込んで悪い状態を改善する効果はないのです」