コスメや美容グッズでは、「オーガニック」「自然派」「無添加」といったワードで製品を説明するものも多い。一見すると肌に優しそうな印象だが、安易に飛びつかない方がいいという。
例えば、韓国コスメからブームに火がついた「シカ」は、天然成分の一種。製造方法や体質によっては、接触性皮膚炎やアレルギーを引き起こす可能性がある。日本の化粧品の場合、これらのかなりおおまかな定義に便乗した商品も見られる。国立病院機構東京医療センター形成外科科長の落合博子さんが言う。
「日本では、有機栽培された植物などの成分がほんのわずかでも入っていれば『オーガニック』と名乗っていいことになっています。そのため、メーカーによって品質の差が激しいのが現状です。
『自然派』は、“化学物質をできるだけ使わず、自然由来成分を主材料としている”というおおまかな定義です。『無添加』という言葉にも厳密には法律上の規定はなく、メーカー各社が“『旧表示指定成分(かつて表示が義務づけられていた、まれにアレルギーなどを起こす可能性のある成分)』を使っていない”という“意思表示”なのです。
ただ、現在では化粧品は全成分を明記することが義務づけられているため、何が使われているか誰でも確認することができます」
パッケージの表面ばかりでなく、裏面までチェックする習慣をつけたい。
美意識の高さが表れるのが「爪」。だがこれも安易なケアはかえって逆効果になる。あいこ皮フ科クリニック院長の柴亜伊子さんが言う。
「マニキュアを落とすリムーバーの主成分『アセトン』は非常に脱脂力が強いため、頻繁に使用すると指まわりのバリア機能が破壊されます。爪磨きも、頻繁に行えば爪が薄く、もろくなり、最悪の場合指先を使ってものをつかむことが困難になる場合もあります」(柴さん)
プロに任せれば安心とも限らない。ネイルサロンでのジェルネイルやスカルプネイルにもリスクがある。「グリーンネイル」といって、自爪とジェルの間で常在菌の一種である緑膿菌が繁殖することで、爪がまるで“腐ってしまったかのよう”な緑色や黒に変色してしまう現象だ。
熱心なお手入れが仇になるのは、「歯」も同じ。サイトウ歯科医院院長の斎藤正人さんは、歯のホワイトニングにも警鐘を鳴らす。
「ホワイトニングに使う薬剤は『過酸化水素』。つまり“漂白剤の高濃度版”と考えてほしい。高濃度の過酸化水素につけると歯の水分が奪われてもろくなる。しかも食事をする限り着色汚れがつくことは避けられないため、2、3年もすれば元の色に戻ってしまう。高いお金を払ってまでする必要があるのか疑問です」(斎藤さん・以下同)
ホワイトニング効果が高いとされる海外製の歯磨き粉はフッ素濃度が高く、かえって歯の透明感が損なわれる恐れがあるため、注意が必要。一方、国内の市販のホワイトニング系歯磨き粉は研磨剤が歯肉を傷つける可能性があるので、こちらも頻繁に使うのは避けたいところだ。
「歯の審美治療でトラブルが目立つのは、歯の表面を削ってセラミックやジルコニアをかぶせて白く見せる施術も同様です。もし失敗すれば“すきっ歯”になってしまい、歯の間から空気が抜けるような状態になって、会話や食事がしづらくなるのです」
※女性セブン2023年7月27日号