ライフ

【新刊】島田雅彦氏の自伝的小説の後編『時々、慈父になる。』など4冊

「父の料理が恋しくなるように餌付けしておいた」愛息。その成長と旅立ち

「父の料理が恋しくなるように餌付けしておいた」愛息。その成長と旅立ち

 連日うだるような暑さが続いている。外に出るのが億劫になるときこそ、エアコンが効いた涼しい部屋で、ゆっくり読書を楽しんでみてはいかがだろう。おすすめの新刊を紹介する。

『時々、慈父になる。』/島田雅彦/集英社/2310円
 青春私小説『君が異端だった頃』に続く自伝的小説の後編。男子を授かり、その未来に心を砕き、文学者としても円熟期を迎えた現在までを描く。愛息は米国の音大を出てオペラに携わる青年に。時代背景や自著解説も含めて明晰な自己開示。インタビューしたら皮肉の針に刺されて討ち死にしそうというイメージのある方だけに、こんなに率直!?と、ちょっと嬉しくなる面白さ。

男を内面化した現代のセレブ女性よりずっと魅力的な37人の女性達

男を内面化した現代のセレブ女性よりずっと魅力的な37人の女性達

『近代おんな列伝』/石井妙子/文藝春秋/1980円

 どれも濃厚。名医となるも女に医師免許を与えない制度で廃院したシーボルトの娘楠本イネ、大正天皇を産んで皇統を繋いだにもかかわらず日陰に追いやられた柳原愛子、冤罪で死刑になった新聞記者管野須賀子、障碍者教育の母にして哀しい最期を遂げた石井筆子。2023年日本のジェンダーギャップ指数は過去最低の125位に。なぜ為政者達は本書の彼女達の歴史から学ばないの?

元書店勤務のインスタグラマー。ファンの間での通称は「おセンチさん」

元書店勤務のインスタグラマー。ファンの間での通称は「おセンチさん」

『センチメンタル リーディング ダイアリー』/@osenti_keizo_lovinson/本の雑誌社/2200円
 誰でも発信者になれる今、客観的な○○評って有効なのかなあと思う。客観より主観。評者とは繋がれないけど、自分の思いを書く人とは繋がれる。本書は現代のそんな意識にフィットし、書評を読んでいるつもりが、いつしかご本人(本名平野敬三さん)の私的領域に侵入してしまっている感じ。ちょっとおセンチな“途方に暮れる感”は、燃え殻さんにも共通するテイストだ。

単行本発刊後にあったアレコレを書く「文庫おまけ」が、また読ませます

単行本発刊後にあったアレコレを書く「文庫おまけ」が、また読ませます

『ロスねこ日記』/北大路公子/小学館文庫/715円
 愛猫が死んで15年、心にあいた猫穴を埋めるべく、著者は女性編集者の勧めで植物を育てることに。けめたけ、きせのさこ、末尾に松を付ける六つ子達、可愛さを競うユメメ、ピリリ、カーたん。さて何でしょう? 正体は読んでのお楽しみとして、名付けは愛着の源泉だなあと思わせられる。背景には北海道の四季や両親との暮らしもあって、最後にあく大きな穴にもジ〜ンとくる。

文/温水ゆかり

※女性セブン2023年7月27日号

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
《病院の中をウロウロ…挙動不審》広末涼子容疑者、逮捕前に「薬コンプリート!」「あーー逃げたい」など体調不良を吐露していた苦悩…看護師の左足を蹴る
NEWSポストセブン
運転中の広末涼子容疑者(2023年12月撮影)
《広末涼子の男性同乗者》事故を起こしたジープは“自称マネージャー”のクルマだった「独立直後から彼女を支える関係」
NEWSポストセブン
北極域研究船の命名・進水式に出席した愛子さま(時事通信フォト)
「本番前のリハーサルで斧を手にして“重いですね”」愛子さまご公務の入念な下準備と器用な手さばき
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(写真は2023年12月)と事故現場
《広末涼子が逮捕》「グシャグシャの黒いジープが…」トラック追突事故の目撃者が証言した「緊迫の事故現場」、事故直後の不審な動き“立ったり座ったりはみ出しそうになったり”
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者(2023年12月撮影)
【広末涼子容疑者が追突事故】「フワーッと交差点に入る」関係者が語った“危なっかしい運転”《15年前にも「追突」の事故歴》
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
「全車線に破片が…」広末涼子逮捕の裏で起きていた新東名の異様な光景「3kmが40分の大渋滞」【パニック状態で傷害の現行犯】
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン