若い世代を中心に注目を集めているのが、主にオンライン診療で処方される薬を使う「GLP-1ダイエット」。GLP-1は、血糖値を下げるために小腸から分泌されるホルモンの一種で、2型糖尿病の治療薬としても使われている。胃の働きを抑えて食欲を減退させる作用を持つため、肥満治療にも使用されるようになっている薬だ。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが言う。
「医薬品のため、効果も安全性も高いと言えますが、病的な肥満の治療ではなく、単なる美容目的で使うことにはリスクがあります。健康な人が必要以上にやせれば、低血糖を引き起こします。それで転倒して、打ちどころが悪ければ死亡する可能性もゼロではありません」(室井さん)
しかもダイエット目的では自由診療のため、重篤な副作用が出たところで補償はない。美容研究家の上田祥子さんは以前、アメリカの“ダイエット薬”を個人輸入し、体調を崩した経験があると話す。
「海外通販で購入した“やせる薬”をのんだら急に動悸が激しくなって“明らかに心臓に負担がかかっている”と感じ、すぐに服用をやめました。いくら海外で認可され、流通している薬だとしても、そもそも欧米人向けに処方される薬は日本人の小柄な体には強すぎる。もしのみ続けていたら、やせるより先に体を壊すに違いないと感じました」
ダイエット薬は服用するタイプのほか、注射器を購入して自己注射するタイプもある。だが、医療者による適切な指導がないままの自己注射が危険を伴うのは明白だ。“セルフ”が危ないのは注射だけではない。流行するダイエットマシンや美顔器などを自分で操作する月額制の「セルフエステ」も、使い方によっては危険を伴う。あいこ皮フ科クリニック院長の柴亜伊子さんが言う。
「そもそもセルフエステの機械は安全のため出力が低く設定されているので、クリニックほどの効果は期待できません。流行のEMSも、効果が実証されている医療用とは異なり、マッサージ程度の効き目しかないのです。だからといって“やればやるほど効果が出る”と思って規定の時間や回数を超えて行えば、トラブルにつながる。やけどや接触性皮膚炎、色素沈着、たるみの悪化などが報告されています」
市販の美顔ローラーにも、少なからずリスクがある。中にはニッケル製のものが「プラチナ製」と偽って販売され、金属アレルギーが起きた事例もある。
「残念ながら、美顔ローラーなどでいくら引き上げても、筋肉がたるんでいればすぐに下がってきます。マッサージは肌への負担が大きく、力を入れすぎるとたるみやしわを招きます」(上田さん)
脚やせのために着圧ソックスをはくのも、ほとんど意味をなさない。
「脚にたまったリンパ液を別の場所に移動させているだけなので、むくみ防止にはなっても、脱げば元に戻ります。脚を細くしたいからといって寝るときに着圧ソックスをはくと、締めつけで交感神経が緊張し、睡眠中も体が休まらなくなります」(柴さん)
美しさの第一歩は、正しい知識をアップデートし、世の中にあふれる情報を精査することから始まるのだ。
※女性セブン2023年7月27日号