ひとりの時間を充実させる“ソロ活”が一般的なものとなっているなか、ひとり旅に関心を寄せる人も少なくない。だが、「もう若くない」と年齢を理由にひとり旅をあきらめていないだろうか。そこでシニアでも楽しめるツアーを紹介する。
「楽だけど、ひとり参加は居心地が悪そう」というイメージのツアー旅行にも、変化が訪れていた。
2030年には65才以上の単独世帯が4割近くを占める(「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(平成30年3月推計、国立社会保障・人口問題研究所)より)といわれているが、各社、旅行好きが多いシニア世代に熱い視線を送っている。そんな中、「数年前からおひとり参加を想定したツアーを企画し、拡充を図っている最中です」と言うのは、JTBエスコート商品販売事業部の武井康之さん。
同社の添乗員同行ツアーに特化した「旅物語」では、参加者の「観光する場所が多い」「足腰が弱ってきたのでベッドがいい」などの意見をもとに、行程を減らし、1か所の滞在時間を長めに設定した「お身体思い」というツアーを立ち上げた。
「おひとり参加のネックは追加料金がかかることですが、このツアーの中には、1名1室でも同料金に設定したものもあるんです」(武井さん)
コロナ禍以降、自然満喫系に人気が集まっているという。
「3年間なかなか外に出られなかった閉塞感からでしょうか。ただ、その間の運動不足で歩くのが不安というかたもいらっしゃいます。北アルプスのツアーでは10人に対してひとりのガイドをつけるなど、安全面でのケアに注意を払っています」(武井さん)
一方海外では、音楽、美術、自然、専門講師同行といった4テーマをそれぞれ深く掘り下げた「JTBカルテット」というツアーが人気だという。
「見るだけの観光より一歩踏み込んだ、知的好奇心を満たす旅を体験いただけます。もともと趣味性の高い旅は、ひとりでじっくり味わいたいというかたが多く、『JTBカルテット』の7割は、おひとりでの参加なんです」(同社ロイヤルロード事業部の宮嶋博さん)
同ツアーは、最大催行人員が16名と少数で、全員が同好の士。食事の席で話が弾むことも多いという。
「参加者さまからも『ひとりでじっくり鑑賞できるのはもちろん、趣味を共にする人たちと感動を共有できるのが楽しい』との感想をいただきました」(宮嶋さん)
シニア向けのツアーが多様化することで、旅に前向きになる人も増えることだろう。
「コロナ禍で、あるいはひとりだからと旅をあきらめかけていたかたが私どものツアーを通じて『やっぱり旅は素晴らしい』と再確認するきっかけになれば」(武井さん)
「旅はひとりがいい」の幅は今後も広がっていくようだ。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2023年7月27日号