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悪質なネットの誹謗中傷、問題解決の難しさ 多くは「自分が正しい症候群」か

「東京レインボープライド2023」のステージイベントで歌うryuchellさん(時事通信フォト)

「東京レインボープライド2023」のステージイベントで歌うryuchellさん(時事通信フォト)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、ネットで誹謗中傷する人たちの多くが「自分が正しい症候群」であるために生じる問題解決の難しさについて。

 * * *
 7月13日夜、モデルのpecoさんが投稿したインスタグラムの写真には、グアムの空にかかる大きな虹が写っていた。ryuchellさんと息子の家族3人で見た虹だという。うっすらと二重にかかる虹は美しく、古くから虹は幸運のサインという言い伝えがあるだけに、この写真は悲しすぎた。

 12日、タレントのryuchellさんが亡くなった。27歳という若さだった。遺書などはなかったと報じられており、原因はわからない。だが理由の1つではないかと指摘されているのが、ryuchellさんに対する誹謗中傷だ。

 2022年8月、ryuchellさんは自身のインスタグラムで、pecoさんとの離婚を報告した。「これまでの生き方や、”夫”としての生き方について、お話しさせていただく機会が増えていく中で、”本当の自分”と、”本当の自分を隠すryuchell”との間に、少しずつ溝ができてしまいました」といい、「夫と妻ではなく、人生のパートナー。そしてかけがえのない息子の親として、家族で人生を過ごしていこうね、という形になりました」とコメントした。

 離婚とともにカミングアウトした後、ryuchellさんには厳しい批判の声があがった。SNSでは「育児を放棄している」「子供が一番可哀想」「子供を捨てた奴」など辛辣な言葉が投げつけられ、「死んでくれ」という悪質なものまであった。心ない言葉の数々、相手の感情を思いやることも、気持ちを汲み取ることもできない人々が、それに「いいね」をつけていく。コメントした者は自分の発信は正しかった、同意する人がこんなにいると思い込む。

 誹謗中傷する人たちの多くは無自覚だといわれる。悪質なコメントで執拗に攻撃する者もいるが、多くは自分の発言が相手をどれほど傷つけることになるのかという自覚もない。彼らは匿名という壁に守られ、自分勝手に批判するだけだ。

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