飽食の時代、世界的にみても糖尿病患者の数は増加傾向にあり、日本でも1000万人が「予備軍」とされる。特に女性は女性ホルモンの分泌が減り始める40代以降、糖尿病のリスクが増す。治療のカギは早期の対応であり、その代表的な方法はインスリン注射だとされてきたが、最新の知見によって否定されつつある。内科医の水野雅登さんが指摘する。
「従来の医療は糖尿病の早期段階でインスリン注射を推奨していましたが、完全な悪手です。人体は外部から手助けされると本来の能力を失うため、早い段階でインスリンを注射すると膵臓に残ったインスリンの分泌能力を完全に失い、死ぬまでインスリン注射が必要になってしまう。
ただし血糖値が500mg/dl以上の超高血糖かつ無治療の場合は別で、一時的にインスリンを打って膵臓が回復するまで助ける方法があります。その際も短期間にとどめなければ、やがて膵臓の分泌能力がゼロになって一生注射を打ち続けることになります」
インスリン注射と並んで糖尿病治療の代表格とされてきた膵臓からのインスリン分泌を促し、血糖値を下げる薬である「SU剤(スルホニル尿素薬)」にも、水野さんは懐疑的だ。
「SU剤はほぼ一日中、血糖値を継続して下げ続けるため食前や食間に低血糖状態になって強い空腹感が生じます。そのため糖質をドカ食いして血糖値が爆上がりした結果、内臓脂肪が増加してインスリンが効きにくくなります。
また、SU剤は過労状態にある膵臓のβ細胞にムチを打って無理やりインスリンを出させる仕組みであるため、β細胞の寿命を縮めます。要は、SU剤は結果的に糖尿病を悪化させるのです」(水野さん・以下同)
薬に加え、勘違いしている人が多いのは糖尿病では厳格なカロリー制限をしなければならないという「古くて間違った知識」だ。守らなければ最悪の場合、足を切り落とすことになると震える人もいるだろう。だが水野さんは「いまの知見では食事はけっこう自由です」と語る。
「糖尿病治療に必要なのはカロリー全体の制限ではなくピンポイントで糖質だけ制限すること。血糖値を直接的に高める糖質は徹底的に制限する必要がある一方、牛肉や豚肉などの脂質は血糖値を上げず貴重なエネルギー源となり、糖質依存を和らげるので積極的に食べるべきです。ほかには鉄分摂取も重要です」
「糖尿病になると一生薬漬け」とのイメージも時代遅れ。
「糖尿病そのものとは生涯にわたってつきあう必要はありますが、薬は必ずしも必要ではありません。膵臓のβ細胞が充分に残っている中等度くらいまでの段階なら、食事指導や運動指導によって薬なしの生活に戻れます。
運動で優先すべきなのは有酸素運動よりも筋トレです。有酸素運動は運動中しか血糖値が下がりませんが、筋トレで太ももや胸などの大きな筋肉やインナーマッスルを鍛えると基礎代謝が上がって、運動をしていないときも血糖値を下げることができます」
シン・糖尿病治療は食事と運動が希望の星となる。
※女性セブン2023年8月3日号