オリオールズへの電撃移籍が報じられた藤浪晋太郎(29)。アスレチックスで迎えた今シーズン開幕直後は先発で大炎上を繰り返し、リリーフに配置転換されてからも制球難に苦しんでいたが、ここにきて安定した投球を見せていた。その復活ぶりに藤浪の古巣である阪神OBからも喜びの声があがっている。
開幕直後はどん底に見えた。先発ローテション入りして4試合に先発登板したものの、阪神時代と同じく制球が定まらず4連敗。救援投手としても結果が出ず、その後はオープナーにも挑戦した。スポーツ紙デスクが言う。
「3度目のオープナーとなった6月25日(日本時間、以下同)のブルージェイズ戦では、早々に2点を失い、1回持たずに22球で降板。先頭打者への初球があわや顔面直撃かという99マイルのストレートでした。バッターがからくもよけると、ロジャースセンターの観衆からは大ブーイング。ネット上では“藤浪らしいな”とか“メジャーで大谷以上に大暴れしている”と書き込まれる始末でした。
しかし、藤浪はこの試合から変化を見せ始めたのです。1回持たずに降板したものの、160キロ超えのストレートを連発し、無四球だった。藤浪はこの試合から無四球登板を続け、7月19日のレッドソックス戦まで11試合連続49人連続無四球を続けました。ネット上では“藤浪、覚醒”“藤浪が進化している”“完璧”と歓喜の声があがった」
直近6試合では打者23人に対し、被安打4、被本塁打1、8奪三振、0四死球の成績(7月19日時点、以下同)。通算防御率8.57だが、4月の防御率13.00から、5月は10.05、6月は4.35、7月が2.00と尻上がりに改善している。与四球も4月が16(死球3)、5月が8(死球1)、6月が6(死球0)、7月が0(死球1)という数字だ。元阪神の投手コーチで、野球評論家の中西清起氏はこう見る。
「フォーム的には横ぶりがなくなって、しっかり上から叩くように投げられている。二段モーションの二段目を後ろに引っ張る感じだったのが、引き上げる感じになって横ぶりがなくなったんじゃないかな。そうしたことで制球力が上がってきているんだと思います。いい時の藤浪が戻ったというか、もともとそれぐらいの力があった選手ですからね。ようやくメジャーでも力を発揮できるようになったのかなと。
今後が楽しみになってきたと言えます。メジャーのコーチはアドバイスをくれないので、自分でトライしながら修正してきたと思うんです。阪神時代も器用過ぎてうまくいかないことが多かったですが、いよいよメジャーでもやれる自信がついたんじゃないかな」
中西氏は最近も藤浪とLINEのやり取りをしたというが、「1年契約でとにかく結果を出さないといけないということを本人も自覚している様子だったので、このままで順調にいけばいいかな」とエールを贈る。オリオールズへの電撃トレードが報じられたのは、この中西氏への取材の直後だった。
7月15日の本拠地でのツインズ戦前に球団の公式インスタグラムでは、ネイビーのTシャツで球場入りする藤浪の姿が掲載されたが、翌日になって本人が自身のアカウントのストーリーズでその画像に「誰が濃紺(ノーコン)やねん」とコメントをつけた。一時はそのノーコンぶりがネットでも大炎上していたわけだが、恐るべき余裕とメンタルの強さである。
そうした藤浪の様子について、前出・中西氏は「茶目っ気のあるヤツなんですよ。そこが彼のいいところ。メジャーでもある程度自信がついたと思いますよ」と太鼓判を押すのだった。
オリオールズでも期待に応えられるか。
※週刊ポスト2023年8月4日号