神奈川県在住の主婦・Hさん(41才)は6月、風邪をひいて近所の個人病院を受診したが、処方された薬の多さに驚いた。
「抗生物質に始まって消炎鎮痛剤、うがい薬、トローチ、貼る咳止め、薬で胃が荒れるので胃薬、抗生物質で下痢をすることがあるから整腸剤……。引っ越してきたばかりで初めて受診しましたが、前の病院ではこんなに薬を出されたことがなかったので、かえって不安です」
Hさんの不安は専門家からみても的中している。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんが言う。
「時代遅れの病院の典型です。特に抗生物質は百害あって一利なし。風邪というのは9割がウイルス性で、抗生物質はほぼ効かないのは常識。むしろMRSAなどの薬剤耐性菌を生む危険性があります。わかっていて処方しているなら、保険点数を稼ぐための悪徳病院でしょう」
医療に詳しいジャーナリストの村上和巳さんが続ける。
「高齢者の場合、抗生物質で腸内細菌叢(腸内フローラ)がやられて下痢を起こし、脱水を起こします。細菌性の肺炎なら処方することはあり得ますが、そうでなければいまの時代に抗生物質を出す医師は論外です」
いま、子供を中心にインフルエンザが流行し、学級閉鎖が相次いでいる。主な治療薬は「タミフル」だが、過去には服用した子供の異常行動が指摘され、やり玉に挙げられたこともある。しかしそれもいまは昔。
「2018年に未成年者への“使用原則中止”が解除されているので、禁じている医師は情報不足です。また、最近のインフルエンザ治療薬の中には、投与された人から薬が効きにくくなる耐性ウイルスが検出されたものもある。タミフルを使った方が効果的です」(長澤さん)
医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんも同様の意見だ。
「タミフルをのめば発熱期間が1日か2日短くなるので少しでも体への負担を軽減するためにも使った方がいい。また、40℃近い熱が出ているのに、検査せずに“いったん、様子を見ましょう”という医師はヤブ医者だと言っていい。検査で風邪かインフルエンザかを診断し、適切な薬を出す方が、ずっと体調が楽になります」(上さん)
予防のためにうがい薬をすすめる医師もいるが、新潟大学名誉教授の岡田正彦さんは一刀両断する。
「ヨードは粘膜を痛めるので、かえって喉を悪くします。喉が痛いときには普通の水か塩水でうがいしましょう」
必要な薬をしっかりのんだら、あとは家でゆっくり休むべし。
「昔はお風呂に入ったらいけないといわれましたが、それは浴室が寒かった時代に湯冷めが風邪を悪化させるとして流布された言説です。いまの医療常識と住宅環境であれば入っても問題ありません」(上さん)
昔の常識にとらわれた養生法はまだある。
「卵酒をすすめる医師も古い。昔は栄養のある食べ物が限られていたからよしとされていたものの、現代日本においては時代遅れ。そもそもアルコールは免疫力を下げるのでよくありません」(長澤さん)
※女性セブン2023年8月3日号