40才以上で約20人に1人、60才以上では約10人に1人が罹患しているとされる緑内障。視神経に障害が起こることで、視野が狭くなったり欠けたりする病気で、眼圧の高さが原因のひとつとされている。だが、その診断基準は近年、大きく変化しているという。二本松眼科病院副院長の平松類さんが説明する。
「昔は眼圧が21mmHgを超えた場合のみ、緑内障と診断していました。しかし、正常範囲とされる眼圧10~20mmHgでも緑内障になっているケースがあり、これを『正常眼圧緑内障』と呼んでいます。緑内障は目の酷使や老化などさまざまな要素で起こることが明らかになり、“眼圧だけで判断してはダメ”というのがいまの常識です」
もし「20mmHg以下だから緑内障ではない」と断定されたら、その医師は時代遅れだと思った方がいい。緑内障は検査だけでなく、治療においても大きな変革を迎えている。
「それまで、目薬を何度もささなければならないことが患者にとって大きな負担でしたがいまは合剤が出てきているので、いくつもの目薬をさす必要がなくなりました。しかし、医師が薬の情報をアップデートしていないと、一つひとつ薬を出して、患者が大変な思いをします。間違った方法ではありませんが、患者の負担を軽くし、サポートするという意味では、選択肢を示せていないことになります」(平松さん・以下同)
年齢を重ねると白内障に悩まされる人も増える。加齢とともに水晶体が白く濁り、目のかすみや視力低下などを引き起こす病気だ。白濁した水晶体を手術で取り除き、レンズを入れる治療が行われているが、その技術も日々、進化している。
「昔は、遠くも近くも見える多焦点眼内レンズはダメといわれていました。レンズの性能が悪く、入れてもすぐにぼやけて使い物にならなかったからです。しかし、レンズの性能が向上し、いまは選択肢のひとつになっています」
老眼も「メガネをかけるしかない」といわれていたのは、過去のこと。
「ここ10年ほどで老眼用のコンタクトレンズの性能がよくなりましたが、医師のなかには“老人はコンタクトをしないだろう”という思い込みにとらわれ、新しい方法を示せない医師がいます」
最新の知見を得たことで治療法の幅が広がったのは、眼精疲労を引き起こすドライアイも同様。
「かつては涙が足りていないことが原因と考えられてきて、そのため涙の量を足すことをメインとする目薬が使われていました。しかし、実際には量はあるけれど質が悪いというケースが多く、いまは『ムチン』というネバネバした成分で最近で涙の質を改善する目薬があります。医師が昔の常識のままだと涙の量にのみ治療を行います」
選択肢が狭まるのならまだましで、時代遅れの医師にかかった結果、最悪のケースに発展することもある。
「失明原因のひとつである『加齢黄斑変性症』は、最新知識のない医師にかかると『治らないので失明します』と言われてしまうケースがある。いまは『抗VEGF抗体』を目に注射することで、病状を止めることができるようになってきました」
気をつけるべきは子供も同様。子供が眼帯を長くつけていると視力の低下を招くため、ものもらい程度では眼帯をしないのがいまの常識だという。
※女性セブン2023年8月3日号