青年漫画に登場する「ヤンキー少女」として、ホームドラマにおける「非行少女」として──いまでこそ、「キャラクター」としてしかその姿を見ることはほとんどできない“レディース”という存在だが、30年前の日本では特攻服をなびかせ、我が物顔で歩いていたのだ。
そんな彼女たちを主役にした伝説の雑誌があった。レディース専門誌『ティーンズロード』だ。第29回小学館ノンフィクション大賞受賞作『特攻服少女と1825日』で当時の日々を綴った『ティーンズロード』創刊編集長の比嘉健二さんはまる5年間、レディースたちと向き合ってきた。
「彼女たちはみんな『自分のチームが一番』だと思っているうえ、10代後半の思春期まっただ中で血の気も多い。撮影時はいつ警察が来るかといつもドキドキしていたし、トラブルやハプニングは数え切れないほどありました」(比嘉さん、以下同)
取材現場から走って逃げたことや、警察が介入したこと、レディース同士で喧嘩が起きたことは数知れず。そうしたエピソードは本書の中にも多数描かれている。
「編集部にクレームを入れてくる読者も少なくなかった。その中でいまでも印象に残っているのは、誌面や表紙のデザインについての苦情でした」
《ある埼玉県内の暴走族を取材したが、これが結構絵になるチームだったので、あえてアート性を意識してモノトーンでページを構成した。当時でいうところの都会的で小洒落たイメージだ。表紙で懲りたはずなのに、編集者の悪い癖でどうしてもこういう処理をしたくなるのだ。
自分としてはイメージ通り渋めに出来上がったので、彼らもかっこいいと喜ぶだろうと思 っていたら、発売後、彼らから強烈なクレームがきた。