北朝鮮で、過度の賄賂を要求するなどの汚職や腐敗を繰り返す警官に対して公然と抗議した市民が、場合によっては警官を殴ってけがを負わせるなどの事件が頻発していることが北朝鮮当局の内部文書で明らかになった。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
この内部文書によれば、昨年7月から12月にかけて、警官の横暴に抗議したり、さらには暴行するという事件が両江道(朝鮮半島北東部)で数十件も起きているというのだ。
例えば、恵山市では警官が取り締まり中に、ある運転手が運転に必要な書類を持っていなかったとして、2時間以上も運転手を拘束し、怒鳴りつけたり、脅したりしたあとで、見逃す代わりにガソリンと現金を要求したケースがあったという。
運転手は金を持っていないと拒否したところ、警官は運転手を警察署に連行しようとした。怒った運転手は警官の横暴に腹を立てて、殴りつけた。さらに、オートバイで逃げた警官を追いかけて、車をオートバイにぶつけて、警官を殴ったという。
また、ある市場では、警察が店を開く許可書を持っていない行商人をどなりつけていたところ、買い物に来た女性数人が行商人の味方をして、警官を取り囲んで口論となり、掴みあいになった事件も起きている。中には激高して、警官の制服を引っ張り、肩章を引きちぎった女性もいたという。
北朝鮮経済は1991年のソビエト連邦崩壊以来、経済が壊滅的な打撃を受けた。中国からの支援もあったが、多くの市民が長らく厳しい生活を強いられてきた。
かつて政府が生活を保障していたころは、市民にとって警察など公権力は絶対的な存在だった。しかし、2019年以降の新型コロナウイルスの感染拡大による国境封鎖で食糧や生活必需品が激減し、頼りの中国からの物資が途絶えたことで、餓死する人々が出るなど、市民生活は極度に困窮している。
そのようななかで、警官が依然として公権力をかさにきて市民から金品を要求するなどの横暴な行為に耐えきれなくなり、怒りが爆発しているようだ。