放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、高田氏が選出した「代表的日本人」について綴る。
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よその雑誌のことをとりあげるのってよくないのかな? 出版業界活性化のためならよしともしよう(それ程大袈裟な話でもないが)。「週刊ポスト」の永遠のライバルとは言われていない月刊「文藝春秋」が創刊100周年で様々な企画をやっている。8月号ではなんと「現代の知性24人が選ぶ代表的日本人100人」。なんとも魅力的なアイディアである。そもそも『代表的日本人』というのは1908年、明治の思想家内村鑑三が物した本らしい。
そして今「現代の知性」に選んでもらおうというわけでこの24人の中に私がいるわけですよ。皆さま、今まで私を甘く見ていたんじゃないんですか? 私こそが「現代の知性」なんですよ、お客さん!
他のメンバーはと見れば学者に博士に作家に先生。真面目を絵に描いてステッカーにしたような方達ばかり。柔かいのは私だけ。ひとりが5人ほど選んで計100人に……という大特集。ここはひとつ「たこ八郎」とでも答えようと思ったが、やって来た編集の方達もマジな様子。創刊100年である。
改めて代表的日本人を考えてみたが案外むずかしい。「青春のヒット曲ベスト10」だとか「プロ野球選手ベスト9」ならスラスラ答えられるが代表的日本人……「今のところどんな人が挙がってます?」「伊能忠敬、福沢諭吉、徳川慶喜、吉田茂……」。おいおいっますますたこ八郎の出番はないぞ。
すると向こうから助け舟。「難しいことは苦手なようなので、高田さんにはどうでしょう? 戦後の文化芸能から5人選んで頂くというのは?」。たやすいこと、徳川慶喜なんて古い人じゃなくて私はよりアップデートした人選で行きますから──と選んでコメントしたのが以下の6人。「北野武さんのことは昨年書かれてますので他に」。
戦後といえば文化は“映画”。「黒澤明」で問題のないところ。“テレビ”が生まれ『スーダラ節』や『シャボン玉ホリデー』で日本中を明るくした「青島幸男」(私ならではの選球眼)。
“俳優”部門の横綱は「森繁久彌」で文句なし。団塊世代のあの反抗の時代のシンボルであり心の支えだった「高倉健」。江戸庶民文化としての“古典落語”それは志ん生でも談志でもなく我が永遠の“朝さま”「古今亭志ん朝」。
そして唯一まだ現役で歌い続け先日も私と同じ誕生日(75歳)に“さいたまスーパーアリーナ”で超満員ライブを大成功させた“永遠のジュリー”「沢田研二」である。みごと。これが私の代表的日本人!
※週刊ポスト2023年8月4日号