マスク着用は肌トラブルの一因とされるが、このたびその実態を調べた結果が報告された。中国の研究グループが7月19日に論文発表したもの。
9000人以上を対象に実態調査
コロナ禍によるマスクの長時間着用が続いて、肌トラブルの増加につながると言われている。
ヒフコNEWSでもニキビの発生の増加について伝えている。その研究結果によると、マスクを着用している人には、下あごのほか、ほお、あごのラインにニキビができやすいという。
マスクの使用率は減っているものの、それでも多くの人が感染予防のマスクをし続けている。マスク着用とニキビをはじめとした肌トラブルの関連は依然心配な事柄ではある。そうした中、中国全土で、長時間のマスク着用がもたらす肌トラブルについての調査が実施された。
中国皮膚科医協会は、9258人が参加する全国調査を実施した。この調査では、皮膚の状態、使用するマスクの種類、マスクの着用時間、マスク着用による影響、洗顔や保湿などのスキンケア習慣など、さまざまな側面から調査が行われた。分析されたデータは、主に18~40歳の女性で、有効回答者6641人の回答から構成されている。この調査は、2023年7月19日に美容皮膚科の専門雑誌Journal of Cosmetic dermatologyに掲載された。
肌ダメージとマスク着用の影響を検証
こうして分かったのは、マスク着用と肌トラブルとの詳しい関係である。
回答者の大多数(92.3%)が一般的な紙でできたサージカルマスクを使用しており、半数強(56.5%)の人が1日1回マスクを交換していた。
赤み、腫れ、かゆみ、ニキビの増加など、コロナ前と比べて皮膚状態が悪化したと報告したのは約26.6%だった。
また、綿でできた布マスクと比べて、サージカルマスクとウレタンマスクは顔の皮膚トラブルの確率がそれぞれ2.40倍と3.06倍に増えることが分かった。
さらに、長時間マスクを付けるほど、ニキビ、赤み、かゆみ、乾燥を含む顔の肌トラブルの症状が増えていた。1日8時間以上のマスク着用は、2時間程度の人と比べると、皮膚状態の悪化の可能性を1.51倍増やすことが確認された。
マスク着用時間に関連する鼻、呼吸器、目の症状も増えたという。マスクの交換頻度を増やしても、肌トラブルや敏感症状の重症度に影響はなかった。
洗顔するほど肌トラブルが増えた
さらに、洗顔と保湿の習慣を分析した結果、洗顔の頻度が高いほど(1日1回以上)、皮膚の状態が悪化することが明らかになった。一方、保湿製品、特にクリームの使用は有益で、適切な保湿剤の使用は、皮膚の状態を改善した。
今回の調査結果は、マスク着用が皮膚の健康に与える影響を裏付けるものだった。長時間の着用、特定のマスクタイプ、過度の洗顔は肌の悪化を招く可能性があり、注意すると良さそうだ。
参考文献
美容クリニック看護師座談会vol.4 「コロナ禍で美容医療業界に起きた変化 今後脱マスクで増える治療は?」
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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