この夏の高校野球は全国各地の地方大会で強豪校・名門校の敗退が相次いでいることが注目を集めているが、岐阜大会では2年連続で夏の甲子園の土を踏んでいた県立岐阜商業が準決勝で敗退。チームを率いる名将・鍛治舎巧監督に話を聞くと、高校野球ファンを驚かせる“新構想”を口にした。
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優勝候補が甲子園への道半ばで敗退する波乱は、岐阜大会でも起きた。
春の岐阜王者で、夏の甲子園の3年連続出場を狙った県立岐阜商業が、市立岐阜商業のエース右腕・森楓真を攻略できず、0対2で敗れたのだ。
試合後、今年72歳になった県岐商の鍛治舎巧監督は落胆し、大きな溜息をついていた。
「こんなところで負けるかなあ。情けないなあ。遥かに力の差はあるのに、もったいないなあ。(相手投手に)変化球を有効に使われて、打たされた。変化球を捨てて、見ていこうとしていたのに手を出してしまった。反対に相手は狙い球を真っ直ぐに絞ってガンガン打ってきた。うちが徹底しきれなかった。2点はワンチャンスでひっくり返せますが、完封されていたらそりゃあ野球は勝てません。5番打者の三塚武造と6番打者の加納朋季のこの大会の打率が1割台なのは痛かった」
春3回、夏1回の全国制覇を誇る名門でありながら、低迷していた母校を建て直すために監督に就任したのが2018年のこと。当時から鍛治舎監督は、学校創立120周年と野球部の創部100周年となる2024年を目処に監督業とは別れを告げると話していた。
その気持ちは今も基本的には変わらない。
「ただ、それを口にしてしまうと選手が集まらない。対外的には『(甲子園通算)100勝するまで』と伝えています」
現在、県岐商の甲子園勝利数は87勝。この夏の敗退によって、たとえ来年に春夏連覇することがあっても、残念ながら100勝には届かない。
「100勝まで続けたら、死んでしまうな(笑)」