スズメバチによる犠牲者は毎年10人を超え、特に夏場に人を脅かす。ハチの生態を知り尽くす駆除のスペシャリスト集団に密着し、一般家庭にできた巣の駆除現場を徹底レポートする。
真夏を迎え、ますます活発化し、攻撃性も高まるスズメバチ。全国的に知られるハチ駆除専門会社「みどり産業」(埼玉県)の“カリスマ・スズメバチハンター”3人に密着し、駆除の現場を取材した。
「今年は暑さの影響で駆除依頼の出足が例年より約2週間早く、6月下旬から駆除依頼が急増しています」
そう語るのは“切り込み隊長”として調査や駆除の先陣を切る松原暢明氏だ。1軒目の茨城県内の住宅に到着すると、ハチが何匹も飛び交っていた。依頼者のAさん宅からは「1階居間の天井付近が雨漏りするので修理業者に来てもらったら、ハチの巣があると言われた」との連絡だったが、現場のハチの出入りの様子から他に5つの巣を確認した。
その1つが攻撃的で危険なキイロスズメバチ。屋根裏に直径約20cmの巣を作っていたことにAさん夫妻は驚愕し、「巨大化する前に駆除できてよかった」と安堵の表情だった。巣は軒下、天井裏に作られやすく、近隣に雑草地があると餌場になるため、そばの家が狙われる場合も多いそうだ。
同社のモットーは生け捕り。駆除の際、殺虫剤は使わない。スズメバチ1巣の駆除料金は2万2000円?。巣ごと回収し、生きたハチは大学の研究機関や、殺虫剤の製造会社に販売する。ミツバチを飼い、ハチミツも売っている。
2軒目は千葉県内のTさん宅へ。屋外の収納箱にモンスズメバチが出入りしていた。すぐに駆除を始めず、3人は付近の川や別の草地に向かい、長時間、観察を続けた。
「元の巣を探しています。収納箱の巣は移住するために作り始めた新居。女王蜂はまだ元の巣で生活しており、そこを突き止めて駆除しないと、女王蜂はまたどこかに巣を作ります」(田迎真人氏)
元の巣は近隣の雑草が茂った場所と予想。駆除後、移住先の巣を再び家や敷地内に作られない対策をTさんに松原氏がアドバイスする。
「巣を探しに来るハチもいるので巣を作りやすい軒下や、ハチを見かけた場所に後から殺虫剤をかけておくのを続けると、そこに巣を作るのを諦めるはずです」
スズメバチは9~10月の繁殖期に最も凶暴になるという。内田氏は「家や庭でハチを見かけたら近寄らず、自治体や駆除業者に連絡してほしい」と呼びかける。山林や草地に行く際は攻撃色である黒色の服装を避け、ハチと出遭ったら手で払ったり走って逃げたりせず、ゆっくり後ろに下がるのが刺されないための鉄則だ。
■みどり産業(本社・春日部市樋堀138-3):ハチの駆除エリアは東京都、埼玉県、千葉県、茨城県。公式YouTubeチャンネル『みどり産業/まっちゃんねる』で駆除の動画配信中
取材・文/上田千春
※週刊ポスト2023年8月11日号