2008年に市場デビューした、石川発の希少ブドウ「ルビーロマン」。1粒が巨峰の2倍にもなる“宝石のような果実”が育てられる現場を訪ねた。
“宝石にいちばん近い果実”と冠される石川県産高級ブドウ「ルビーロマン」の今年の初競りが7月14日、金沢市中央卸売市場で行なわれ、1キロの1房が過去最高値の160万円で競り落とされた。過去最高だった昨年より10万円高い値に、どよめきと拍手が沸き起こった。
最高値で落札されたルビーロマンは、1粒の重さが30グラム以上の等級「特秀Gクラス」。1キロのルビーロマンが初競りに出荷されたのは初めて。33粒の実が付き、1粒当たり約4万8500円となる。地元の青果会社「堀他」が競り落とし、台湾で富裕層向け高級スーパー3店舗を経営する「裕源」の謝明達社長(68)が購入した。同社長は「決して高いと思わない。農家の方、関係者の方みんなの努力を考えれば、160万円は安いんじゃないかなと思います」と話した。この日は計12房を総額約250万円で購入。
「すべてお客様が決まっています。こんなに大きく均等な粒と色、品質、香り、食感は世界一ではないでしょうか。タイや香港からの注文もあります」と絶賛した。
県内の生産者だけが栽培できる希少ブドウ
ルビーロマンは石川県農林総合研究センター農業試験場砂丘地農業研究センターが14年間かけて開発し、2023年、市場デビューから16年目を迎えた。巨峰の約2倍になる粒の大きさは国内品種トップレベル。鮮やかな紅色、さわやかな甘味、ジューシーで酸味が少ないのが特長だ。
検査員が審査し、色、形、糖度(18度以上)、重さ(1粒20グラム以上)など厳格な基準をすべてクリアしたものだけがルビーロマンと認められて出荷される。契約を結んだ県内の生産者のみが栽培できる。県内のブドウ園を訪れて取材をすると、栽培の難しさ、気が遠くなるような手間と徹底した管理に驚いた。県砂丘地農業研究センター研究主幹の田村茂之氏が説明する。
「花が満開になった後、概ね90日で出荷となります。粒を大きく、房の形を美しくするために成長段階で余分な粒を切り落とす摘粒作業や房づくりが出荷直前まで続きます。仕上がりの房をイメージして調整する経験とセンスが求められます」
出荷は9月末まで続き、今年は昨年より6000房多い3万房を目指す。
撮影/小倉雄一郎 取材・文/上田千春
※週刊ポスト2023年8月11日号