放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、日本大学芸術学部の後輩たちとの「オール日芸寄席」山形編について綴る。
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「暑い」という言葉をこの世から消したいほどアツイ。
そんな中、私にとっては久しぶりの地方公演(7月18日)。日大芸術学部の落語研究会の先輩・後輩らで開催してきた「オール日芸寄席」。今回はなんと山形編である。何故山形でひらかれたのか? きっと誰かが癒着しているのだろう。「山形放送開局70周年事業」なんてポスターには書いてある。
しかし、たまには先輩と後輩が長いこと列車に乗って舞台やって全員集まり飲み会もなにやら“夏の合宿”みたいで楽しくていいものだ。日大の理事長を林真理子にゆずった私は75。立川志らく(もうすぐ60)、三遊亭かわりもの白鳥(60)、一番下が春風亭一之輔(45)である。等しく15歳ずつ違う。これに山形出身の「なんでだろー」テツandトモ。地方でなければこのメンバーにゲストとして爆笑問題(太田はウラでない)や宮藤官九郎というとんでもなく豪華な日芸オールスターである。
『笑点』のレギュラーにもなったし、辛口だしで“一之輔人気”をヒシヒシ感じる。舞台にズラリ並んで私が「あいさつでもしとくか」と言えば一之輔「笑点に魂を売った男、一之輔です」。もうこれだけでドッカーンである。山形市民会館には山形県民全員が入ったのかと思うほどの超満員。負けず嫌いの志らくがすかさず「ひるおびに魂を売った男、志らくです」に客席が波打つ。すかさず私が白鳥を指さして「これが上野で血を売った白鳥です」。白鳥が真っ赤になって「やめて下さーい。本当のことは」にまたドッカーン。先輩と後輩、いい呼吸である。
ここにもし生きていれば私と同期の古今亭右朝(名人間違いなしと言われ52歳で死去)、そして大監督にまで登りつめた私の1年後輩の森田芳光がいたのだ。こうやって皆なでワイワイ集まると森田のデビュー作『の・ようなもの』の世界である。いくつになってもどんなに偉くなっても、こうやって普通に集まれるのが仲間のよさである。
打ちあげをやっていると白鳥もうベロベロ。始まって30分もしないうちに「ハイみんな~ッ。もう高田先生がおねむなので今日はここまで」。ひとのせいにしやがる。そこへサンキュータツオが近くの大学で講義を終えたとかで入ってくる。しみじみ「いいなぁ日芸。こうやって今でも旅してるんだから。来年日芸受けようっと。入ったらオール日芸出してくれます?」だと。それより私がびっくりしたのは山形の人たちはおしゃれでスマート。何たって全員が二足歩行なのだ(byツービート)。
※週刊ポスト2023年8月11日号