資生堂は、全国の先生の情報共有システムを開発しているアローズ(ARROWS Inc.)と共同で「美しさ」への理解を促す教材を作成。これが大きな支持を受け、想定を超える1万人以上の中高生に提供することになった。資生堂が2023年7月26日にその詳細を報告した。
一人ひとりの美しさへの理解を育む
資生堂とアローズが制作した教材は、「自分らしい美しさを制限する無意識の思い込みや偏見=UBB(Unconscious Beauty Bias)」が、自己表現や自信の妨げになっていることを考えさせるためのもの。教材は、道徳の授業で使用することを想定して作られ、2023年4月の提供開始以来、予定された7000人を超える応募が寄せられた。そこでプログラムの範囲拡大して、高校を含めた1万人以上の生徒に教材を提供することになった。
UBB体験サイトが公開されているが、さまざまな思い込みや偏見についての質問が挙げられ、それに関連した経験が説明されている。それを題材として、”SEE, SAY, DO”(知る、議論する、アクションを起こす)と、参加した生徒に促すようなアプローチになっている。
このプログラムの効果は大きく、無意識の偏見や思い込みの問題に目を向けたことがあると回答した生徒は、受講前に62%だったのに対し、受講後は92%に増え、3割の意識変化が確認された。
生徒たちはディスカッションを通じて問題を意識するようになったなど、ポジティブな感想を寄せた。また、授業を担当した教師は「生徒が自分自身の体験をもとに活発に意見を出し合い、真剣に考えることができた」などと指摘し、授業後の満足度については6点満点中5.11点と高く評価していた。
美容医療の利用でも「美しさ」の理解
ヒフコNEWSで伝えたように、10代の脱毛エステや医療での消費者トラブルが頻発しているとの報告がある。成人年齢が18歳に引き下げられ、「美しさ」に対する理解不足から、高額な契約を安易に決めてしまう可能性があり、トラブルが増加する心配もある。また、子どものうちから美容整形や医療脱毛についての議論も高まっている。
美容医療や医療脱毛など、美しさに関連した施術を検討する際には、自分自身の美しさを理解することが欠かせない。美容医療にはリスクが伴い、費用もかかるので、慎重に決める必要がある。10代から「自分らしい美しさを制限する無意識の思い込みや偏見」について考える資生堂の試みは重要だろう。
参考文献
中学生向け教材「誰もが自分らしく美しくいられる世界へ」好評につき本教材の提供先を1万名以上に拡大
成人年齢18歳に、10代の脱毛エステや医療のトラブル相談が急増
あなたの美容医療、大丈夫?大手弁護士事務所のベリーベスト法律事務所が被害情報収集を開始
美容医療と美しさ──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語る Vol.2
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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