今年も8月6日に夏の甲子園が開幕するが、近年、高校球界で急激な変化がみられるのが球児たちの「髪型」だ。かつては当たり前だった「丸刈り」には、“時代遅れ”というイメージすら定着しつつあるが、果たしてそれは全面的にいいことなのだろうか?
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この夏の地方大会が始まる直前、愛知の私立・享栄高校のグラウンドを訪ねると、ナインの頭髪に大きな変化があった。大藤敏行監督は2021年以降、愛知の私学四強(中京大中京、東邦、愛工大名電、享栄)の中で唯一、髪型の自由を認めていたが、その享栄の球児たちが、クリクリの丸刈り(坊主頭)となっていたのだ。
言い出しっぺは、今秋のドラフトでの1位指名が予想される左の豪腕・東松快征だ。仲間に声をかけ、3ミリの長さの丸刈りで統一したという。その理由を東松はこう語った。
「やっぱり最後は高校球児っぽく、坊主かなと思って(笑)。似合いますか?」
清涼感に精悍さが加わって、無論、好印象だ。本当はもうちょっと短く刈り込みたかったらしいが、「短すぎるのはみっともない」という大藤監督の反対に遭った。
「エンジョイベースボール」を標榜する慶應義塾(神奈川)や、髪型の自由化を高校野球改革の第一歩と位置づける花巻東(岩手)など、8月6日に開幕するこの夏の甲子園の出場校でも、球児の髪型が自由な学校も珍しくなくなった。
日本高等学校野球連盟は今年6月、5年に一度実施している全国の硬式野球部を対象にしたアンケートの結果(回答があったのは加盟校の99.2%となる3788校)を公表した。そのなかで、頭髪を「丸刈り」にするルールがある学校は5年前の「76.8%」から「26.4%」に大きく減少。およそ4校に3校は、学校が髪型のルールを決めず、球児の判断にまかせていることがわかった。
丸刈りになるのが嫌で、高校入学と同時に野球を辞めてしまう中学生は少なくない。減少傾向にある野球人口の歯止めの策のひとつとして、髪型を自由にする学校が急増しているのだ。