偏屈な弁護士から復讐に燃えるバンカー、重大事件に巻き込まれる商社マンまで、この男の主演作は必ず話題になる。いまや国民的役者となった堺雅人(49)だが、長い下積み時代は知られていない。若き日の堺を知る者たちが、ここだけの秘話を明かした。【前後編の前編】
理解魔
完全オリジナルストーリーで、制作費が1話1億円と報じられたTBS日曜劇場『VIVANT』(ヴィヴァン)。主演の堺雅人が演じる商社マンは、取引先への誤送金問題を解決するため中央アジアの一国を訪れるが、現地でテロに巻き込まれる。日本大使や公安警察が入り乱れる壮大なシナリオのなかで躍動する堺の姿に、SNSでは〈迫真の演技〉〈やっぱり天才〉と絶賛の声が上がった。ドラマウォッチャーの吉田潮氏が語る。
「『VIVANT』も面白いですが、私は『リーガル・ハイ』(2012年・フジテレビ系)で大好きになりました。彼が演じた主人公の意地悪さや賢さ、コミカルさなどが合わさったゲスなキャラクターは強烈でしたね。
端正な顔立ちではありますが、他の俳優と比べて華のあるタイプとは言いがたい。だからこそ、どんな役でも演じることができる。役者としての凄味を感じます」
2004年のNHK大河ドラマ『新選組!』の山南敬助役でブレイクしてから間もなく20年。社会現象となったドラマ『半沢直樹』(2013年・TBS系)、NHK大河ドラマの『真田丸』(2016年)とヒット作を重ね、「視聴率男」と呼ばれるまでになった堺だが、そんな彼にも長い「ブレイク前夜」があった。
兵庫県で生まれた後、2歳から宮崎県で育った堺は、県内有数の進学校である宮崎南高校に入学した。高校の恩師であり歌人である伊藤一彦氏が当時を振り返る。
「堺君は10クラスのうち2クラスしかない選抜クラスの生徒で、私は現代社会を担当しており、スクールカウンセラーも務めていました。彼はどの教科も優秀でしたが、なかでも国語が抜群。文章の理解力が飛び抜けていて、私は彼を『理解魔』と呼んでいましたね」