警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、暴力団対策法施行以前の時代に、「闇落ち」させようとする暴力団と刑事、超えてはならない一線をめぐる攻防について。
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「昔の刑事にはけっこう悪いのがいた」と話すのは、今は現役を引退したヤクザの元組長だ。「”ゆすりたかり”はヤクザの常套手段、脅迫に恐喝、強要はヤクザにとっては日常茶飯事だが、昭和の時代はそんなヤクザから金を巻き上げようとする悪がいた」という。
暴対法や暴排条例が制定される以前、ヤクザの主な収入源には”みかじめ料”があった。みかじめ料とは、縄張りであるシマにある店の用心棒代や、トラブルがあった時にそれを処理するケツ持ちと称して、店から毎月のように徴収していた金だ。元組長の組では、組員たちが一軒ずつ店を訪れ、声をかけてはその金を受け取っていたという。「毎月その頃になると事務所に顔なじみの刑事がやってきた」という。
「そういう刑事は、所轄内にある暴力団のケツ持ちをしてやっているという感覚だったのだろう」と元組長はいう。「『問題を起こしていないな』と圧をかけてくるから、『そんなことありませんよ。勘弁してくださいよ』と袖の下を渡す。すると『真面目にやれよ』とすんなり受け取って帰っていった」という。「こういう刑事ほど、嫌なやつだった」と元組長はいうが、ヤクザから金をせびっていく刑事は一人二人ではなかったようだ。
黙って昼飯を食べに行っていた
昭和の時代、マル暴に配属になったばかりのある刑事は、二人一組で組んだベテラン刑事に連れられて毎日、ある場所に昼飯を食べに行ったという。「昼頃時、ある暴力団事務所に行った。ベテラン刑事は何も言わずに事務所のドアを開け、慣れたようにソファーに座った。すると組員らも一言もなく当然のように飯を出してくる。俺たちはそれを食べ、何も言わずに事務所を出た」という。そしてこの行動は度々、繰り返されていた。ヤクザの事務所なら、ほぼどこでも組員たちが当番で飯を作るため、飯があるのだ。