スポーツ

【PL野球部復活報道】実態は学園の「受験者ゼロ」、教団は「教祖不在」 9年ぶり新入部員も再建には程遠い実状

硬式野球部のラストゲームからは6年以上が

硬式野球部のラストゲームからは随分と時が過ぎた

 PL学園野球部が復活へ—―—夏の甲子園の開幕日となる8月6日付のスポニチ一面に、そんな文字が躍った。今春に入学した高等部の1年生が、2016年に休部となった硬式野球部への入部を希望し、それが許可されて栄光のナインたちが汗を流したAグラウンドで練習しているという。本当に名門は復活への道を歩み始めたのか。『永遠のPL学園』の著者でノンフィクションライターの柳川悠二氏がレポートする。

 * * *

今年は「国公立コース」受験者ゼロ

 2014年よりPL学園野球部の廃部問題やその母体であるPL教団を取材してきた筆者には、これが野球部の復活に向けた光明とは到底思えない。学園およびその教団の惨状を知れば、無闇矢鱈(むやみやたら)に復活への期待を煽ることなどできないはずだ。

 現在のPL学園は3学年あわせて50人ほどの生徒しかおらず、今年度の入試にいたっては国公立コースにひとりの受験者もいなかった。生徒のほとんどが内部進学者で、みな教団信者の2世・3世ばかりだ。また、現在も存続している軟式野球部は人数が9人揃わず、この夏は他校との連合チームで大阪大会に臨んでいた。さらに、文部科学省の調査によって耐震性に問題のある校舎や寮が発覚。つまり、学園自体が存続の危機にある。そうした問題を解決しないまま、硬式野球部を復活させることに力を注ぐのなら現役の高校生も保護者も納得はしないだろう。

 また教団も混迷期に入っている。2020年12月に3代教祖である御木貴日止氏が亡くなって以降、教祖のなり手がなく、宗教団体としては「教祖不在」という異様な状況が続いているのだ。PL教団の幹部に確認したところ、1年生部員のキャッチボールの相手を務め、ノックを打っているのは、川上祐一教頭だという。彼は学園の剣道部OBで、硬式野球部が活動を休止した時に、監督を務めていた人物だ。

 「復活しようという気持ちは十分あります」

 3代教祖が存命の頃から、教団と学園の実権を握っているのは、夫人の美智代氏であった。教団ナンバー2の教務総長という立場の彼女は、硬式野球部の活動続行を願う硬式野球部のOBや高校野球ファンの声に耳を貸さず、川上氏を硬式野球部の監督に任命し、事実上の廃部を断行させた。廃部への“実務”を担った川上氏が、なぜ今になって野球の指導を再開したのだろうか。

 今年2月、筆者が川上氏にインタビューした際、こう答えていた。

「復活しようという気持ちは十分あります。野球部のOBの方々とも話し合いながら、どういうあり方ができるのかを話し合っているところです。生徒数を増やすことと、野球部の復活は、並行して考えていかないといけないと思っています」

 春夏あわせて7度の全国制覇を遂げたPLの隆盛期、学園に入学するためには両親と共にPL教団に入信する必要があった。憧れのPLに入学できるのならば、宗旨替えもいとわない時代だった。しかし、現在は信者ではない中学生の外部受験を学園は容認していない。

 硬式野球をやりたいという1年生の存在をきっかけとして、固く閉ざしている学園の門戸を信者以外の中学生にまで広げてこそ、野球部そして学園の再興はスタートするだろう。

 ♦取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)

関連キーワード

関連記事

トピックス

自民党最大の危機と言われた「大平・福田の40日抗争」の再来か(写真/共同通信社)
《惨敗で混乱する自民党》高市支持派の反乱で「大平・福田の40日抗争」の再来か その先に待ち受けるのは“高市新党”結成による自民党大分裂と連立政権崩壊
週刊ポスト
来季の米ツアー挑戦を目指す原英莉花
来年は国内女子ツアーから「スター選手」が消える!? なぜ今季未勝利の原英莉花まで「米国挑戦」と言い出すのか
NEWSポストセブン
『旅サラダ』引退した神田正輝
《神田正輝とペアルック姿の妖艶マダム》『旅サラダ』卒業後の現在を直撃、ゴルフ同伴で余生を謳歌する「パートナーとの時間」
NEWSポストセブン
愛犬と散歩をする百恵さん
《急逝だった》百恵さん「義娘の父の死」に悲痛!三浦家との交流が溶かした「10年のわだかまり」
NEWSポストセブン
NBAでの活躍が期待される河村勇輝選手(23)と、昨年10月交際報道があった中森美琴さん(22)
《NBAデビュー飾った河村勇輝》熱愛報道のお相手は日本で“アイドル活動”を継続「別々がいい派」「SNSはフォローしない」と発信する現在
NEWSポストセブン
高市早苗氏を支持する反石破勢力は倒閣をいつ仕掛けるか(写真/共同通信社)
【総選挙が自民党内に生んだ深い怨念】高市支持派が仕掛ける石破首相退陣要求のタイミング 11月臨時国会での野党不信任案提出に呼応の可能性も
週刊ポスト
キングメーカーたちはどう動くか(左から菅義偉氏、岸田文雄氏、麻生太郎氏/時事通信フォト)
《どうなる政界地図》“石破首相退陣”となれば、さらに深まる自民党内の混迷 菅氏、岸田氏らキングメーカーの巻き返しで「高市総理」誕生は遠のくか
週刊ポスト
夜間中学に行くことが夢だ
《スーパーボランティアの尾畠さんが能登半島入りも 1日で活動断念した理由》被災地を前に初めて涙した日、明かした「85歳を区切りに引退」発言の真意
NEWSポストセブン
東京・中野坂上にある私立学校「宝仙学園 順天堂大学系属理数インター中学校」
《音源入手》自慰行為強要・動画拡散いじめ疑惑の宝仙学園、極秘で開催していた保護者説明会の内容「まるで問題児扱い」
NEWSポストセブン
Aくん
《自慰強要・動画拡散》いじめ疑惑の東京・宝仙学園、「さらなる炎上が危惧される」公表を取りやめた“謝罪文”
NEWSポストセブン
ボランティア女性の服装について話した田淵氏(左、右は女性のXより引用)
「もっと下に…下に」“半ケツ”状態でビラ配りのボランティア女性、際どすぎる服装に無所属で出馬する候補は「全然知らなかった」
NEWSポストセブン
ヤンキースのアーロン・ジャッジ(時事通信フォト)
《ヤンキース・ジャッジの意外な生い立ち》生後2日で養子に出された過去「神様が引き合わせてくれた」育ての母への感謝 現在は慈善活動にまい進
NEWSポストセブン