中国の汚職摘発機関である中国共産党中央規律検査委員会は7月下旬、北京で医療分野の汚職撲滅に関する会議を開催し、2023年上半期(1~6月)で少なくとも155人の病院長や事務局長が汚職問題で取り調べを受けており、これは昨年の同時期の2倍以上にあたることを明らかにした。このため、同委は今後の「腐敗摘発の重点ポイント」として医療業界や医薬品業界を集中的に調査することを決めた。中国紙「毎日経済新聞」が報じた。
会議では、広東省や広西チワン族自治区などで「医療腐敗防止自治部隊」を強化し、汚職などの腐敗問題を集中的に調査することを決めたほか、中国東北部、遼寧省の保健衛生委員会と他の13部門も共同で医療分野の腐敗の是正に焦点を当てた通告を発した。
これらの動きは今年5月、中国健康衛生委員会(日本の厚生省に相当)など14の国家機関が共同で発表した「医薬品の購入・販売および医療サービス分野における非倫理的行為の是正のための2023年作業ポイント」の具体的な実施内容に沿ったものだという。
中国では最近、医療情報技術大手の「威寧保健」の周偉会長が贈収賄の疑いで、身柄を拘束され取り調べを受けている。また、バイオ医薬品会社である「彩雲生物公司」の範志和会長も同様の疑いで逮捕された。
医薬品の価格を審査する「国家発展改革委員会」はすでに60以上の中国と諸外国の医薬品会社の中国内の本社や支社の立ち入り調査を実施し、医薬品の価格が適正かどうかを調べている。
13億人の人口を抱える中国は、海外の医薬品会社にとって魅力的な市場となっている。その市場規模は2016年に日本を追い抜き、米国に次いで世界2位に成長。とくに、近年、先進国での医薬品販売が低迷するなか、大手各社は軒並み中国に進出し、中国内の企業との競争も激しくなっており、医療機関の院長や事務局長らへの賄賂攻勢も激しくなっているという。
一方、中国の医療業界にも、中国ならではの特殊事情がある。1万3500カ所の公立病院で働く医師の基本給はすべて同じで、しかも先進国の水準に比べると極めて低いとされ、そうした土壌が汚職につながっているようだ。