こんなに健康に気を使っているのに、それらすべてが無意味だったら……? 長らく“悪者”にされてきた食品の中には、研究によって控える必要がないことが明らかになったものもある。管理栄養士の望月理恵子さんが言う。
「プリン体が多いレバー、うに、イクラ、白子などは、体内の尿酸値を上げて痛風などのリスクになるので避けた方がいいといわれてきました。しかし、最新の研究では、健康な人であれば、体内のプリン体は食品によって上昇しないことが証明されています。
尿酸は食事から摂取されるものが2〜3割で、体内で作られるものが7〜8割。過剰分は体内に留まらず排泄されるのです。また、コレステロールが多い卵やフォアグラも、健康な人であれば摂取量と血中のコレステロール値との相関関係はありません」(望月さん)
長らく、「卵は1日に1個まで」といわれてきたが、情報の出どころは、1913年に行われたロシアの実験だった。あいこ皮フ科クリニック院長の柴亜伊子さんが説明する。
「コレステロールが体に与える影響を調査すべく、うさぎに卵を大量に食べさせたところ、血中のコレステロール値が上がって死んでしまったという実験がもとになっています。しかし、うさぎは草食動物。結果を人間に当てはめること自体が間違いです。
卵が高級食品だった頃、滋養をつけるため病人に食べさせたように、卵は生命の源であり、高たんぱくで栄養価の高い優秀食材です。実際、総コレステロール値が低くてやせ気味なのに、1日1個くらいしか食べていない人は、むしろ気分が落ち込みやすく、乾燥肌になるなど、トラブルも多いのです」
柴さんは、「卵に加えて、悪者にされがちな肉やバターも、積極的に食べてほしい」と強く訴える。
「肉には良質なたんぱく質のほか、体に必要なヘム鉄、亜鉛、ビタミンB群、ビタミンAなどが入っていて、野菜に比べて吸収率が高く、効率よく栄養素を補えます。特にやせすぎている女性や高齢者は栄養状態の改善のため、積極的に摂るべきだといえます」
バターに多い飽和脂肪酸も、循環器疾患のリスクを高めるとされてきたが、大規模研究は真逆の結果を導き出した。
国立がん研究センターの調査によると、飽和脂肪酸を食べる量が少ないグループは、食べる量が多いグループに比べて脳卒中のリスクが上昇していたのだ。ただし、飽和脂肪酸を食べる量が多いグループは心筋梗塞のリスクが上昇することもわかった。
「この調査からわかるのは、飽和脂肪酸を適度に摂取することが健康への近道だということ。特にバターは抗酸化作用のあるβ-カロテンも豊富で、料理にコクや旨みをプラスできる。普段の食事に少しだけ足してみてほしいです」(柴さん)
※女性セブン2023年8月17・24日号