中国との国境を警備する朝鮮人民軍国境警備隊の兵士が覚せい剤使用で逮捕されたり、地域住民の民家に忍び込んで盗みを働たいたりするなど、隊員の士気が低下し、違法行為や規律違反の事件が頻発していることが明らかになった。
国境を越えた数キロ先の中国側の豊かな生活をみて自暴自棄になり、軍務を忘れて金もうけに走るなどの行動も目立っているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
覚せい剤使用で逮捕された国境警備隊の兵士はまだ30歳。4年前の2019年に、優秀さと社会主義への忠誠心を評価されて、中国東北部吉林省と接する両江道の国境警備隊に配属された。
最初はまじめに勤務に励んでいたが、警備隊の勤務は3日ごとの24時間勤務で食事も粗末で給料も安いのに不満を覚えるようになった。また、国境の図們江の対岸の中国の生活が豊かなのもうらやましくなっていったという。
そのようなとき、同僚の兵士が中国の企業と密輸入して賄賂を受け取っているのをみて、彼も密輸業者を脅して、金を稼ぐようになった。その金で覚せい剤を買って使用しているうちに、薬物依存になっていった。
彼は上級兵だったことから、近隣の村でも一目置かれて、23歳の女性と交際するようにになった。しばしば彼女の家で、2人で覚せい剤を使用していたが、住民の間で噂となり、軍に密告され逮捕された。
また、この兵士同様、薬物依存になった別の兵士は金に困り、近隣の家に強盗に入ったところを捕まり、見せしめのために銃殺刑になったという。
中国やロシアとの北部国境沿いには、武装した朝鮮人民軍の国境警備隊5個旅団(1旅団=3000~4000人)が駐屯している。同部隊は、密輸や越境行為を見逃して賄賂で金を稼ぐ機会が多く、まじめな兵士でも年月が経つにつれて、軍隊の規律から逸脱してしまうものが少なくないという。長期に渡る経済的苦境は軍の規律さえ蝕んでいる。